国立ハンセン病療養所菊池恵楓園(熊本県合志市)で戦時中から戦後にかけて、ハンセン病患者に「虹波」と呼ばれる開発中の薬を投与する臨床試験が行われ、実態を調べていた同園の委員会は24日、中間報告書を公表した。初期の頃には入所者の3分の1が参加。激しい副作用があったが当時の医師らは中止しなかったとした。試験期間中に9人が死亡し、うち2人が特に副作用の影響が疑われるという。他の療養所で投与された可能性も同園が明らかにした。
虹波は写真の感光剤を合成した薬剤で、戦時中に旧日本陸軍が寒冷地での兵士の凍傷対策など肉体強化に役立つと考え、研究したとされる。
報告書によると、臨床試験は1942年12月から47年6月まで続いた。被験者は判明しているだけで472人。報告書は「大規模な試験だった」と説明し「当時の医師らの医療倫理のありかたに疑問が持たれることになった」とも記述した。他にも被験者となった可能性がある入所者が約370人いることも明らかにした。
投与方法は塗り薬や注射、吸入、肛門からの注入などさまざまだった。
また同園は、戦時中の宮崎松記園長が残した文書に、虹波は国内3療養所でハンセン病患者に投与されていたとの趣旨の記述があると明らかにした。詳細は不明とした。
共同通信に以前開示された宮崎園長名の43年の報告書には、運動力や視力の回復などがみられたとする一方、死亡例もあったと明記されていた。別の資料は、注射による投与から数時間後、突然の発熱や頭痛、けいれんに見舞われ「全身の血管に針を刺したような感覚」を患者が訴えたとした。
虹波関連資料は園内に眠っていたが、2005年ごろから学芸員を中心に進めてきた資料整理の過程で20年ごろ、ノートや報告書など数点を発見。入所者自治会の要請で22年末から精査していた。〔共同〕
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