講演で命の大切さを訴えた鷲見三重子さん=三重県名張市東町の名張高校で、渋谷雅也撮影

 交通事故で当時16歳だった長男を亡くした経験を持つ鷲見三重子さん(70)が26日、三重県名張市東町の県立名張高校で1年生や教職員ら約200人に向けて講演し、交通事故の被害者遺族になった悲しみとともに、命の大切さを訴えた。

 鷲見さんの長男の拓也さんは桑名工高2年だった1997年4月24日、部活動を終えて帰宅する途中に信号機のない横断歩道で脇見運転していた乗用車にはねられ、2週間後に亡くなった。鷲見さんはショックで家事が全くできなくなり、「毎日、朝日が昇ると神様に『私の命はいらないので、拓也に命を下さい』と願っていた。なぜ拓也は亡くならなければいけなかったのか、何度も思って現実を認めることができなかった」と悲しみに暮れた日々を振り返った。

 自らのつらい経験を踏まえ、「交通事故の被害者や加害者になってしまうと、夢をかなえることが難しくなる。亡くなれば未来が一瞬でなくなる。周りにも支えられて生きている。あなた一人の命だけではありません」と語りかけた。鷲見さんの切なる思いを聞いた上島璃央さん(15)は「交通事故はいつどこで遭うかわからない。いろんな人の支えがあって生きているから、命を大切にしていきたい」と受け止めていた。

 鷲見さんは2013年から「いのちの言葉プロジェクト」を主催し、県内の大学生とともに命の尊さを訴える活動を行っている。「自分の子を亡くした経験から、誰も事故で亡くならないでほしいという思いがある。できるだけいろいろなところに足を運んで、命の大切さと生きていれば助けてもらえることがあると伝えていきたい」と話した。

 今回の講演は、県警とみえ犯罪被害者総合支援センターが2010年度から主催する「命の大切さを学ぶ教室」の一環で行われた。昨年度は18回実施され、今年度は12回が予定されている。【渋谷雅也】

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