東京地裁へ向かう原告ら(27日、東京都千代田区)

夫婦別姓を認めない民法や戸籍法の規定は憲法違反で無効だとして、東京などの男女10人が国に損害賠償などを求めた訴訟の第1回口頭弁論が27日、東京地裁であった。原告側は「姓を変える苦しみに向き合って」と意見陳述。国側は「訴えは不適法だ」などと争う姿勢を示した。

夫婦別姓を巡る集団での裁判は3回目。過去2回は最高裁大法廷が2015年と21年に「合憲」と判断した上で「国会で論ぜられ判断されるべき事柄」と言及した。経済界からは「選択的夫婦別姓制度」を求める声もあり、訴訟の行方が注目されている。

原告は東京や長野に住む40〜70代の事実婚の男女4組と、法律婚の男女1組。別姓のまま結婚できる地位の確認や1人あたり50万円の賠償などを求め、3月に東京地裁に提訴した。札幌地裁でも男女2人が同種訴訟を起こしている。

訴状では、夫婦別姓を一切認めない現行民法などは「夫婦のいずれかが姓を変更するか、姓を維持するために婚姻を諦めるかの過酷な二者択一」を迫ると強調。個人の尊重を定めた憲法13条などに違反するとしている。

この日、法廷で意見陳述した原告の内山由香里さん(56)は「何千回も名乗り続け、呼ばれ続けてきた名前は私そのもの。(旧姓の)通称使用で不利益が解消されたと感じたことは一度もない」と述べた。

事実婚の夫と娘を育てる黒川とう子さん(仮名、51)は「不安と背中合わせの毎日。同姓の強制の裏にある苦しみや自己喪失感などに、真正面から向き合ってください」と訴えかけた。

国側は答弁書で、原告側の請求が認められるためには新たな立法が必要になると指摘。「(訴訟は)国会の立法行為を先取りし、裁判所に夫婦別姓制度の創設を求めるのに等しい」として、裁判で解決できる紛争にはあたらないと主張した。

夫婦別姓を巡っては経団連が24年6月、選択的夫婦別姓制度の早期導入を求める提言を公表した。経済同友会も同3月に要望書を提出するなど実現への要請が強まっている。

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