クマに遭遇した男性の命を救ったのはスプレーでした。絶体絶命のピンチと九死に一生を得た一部始終をカメラの前で語ってくれました。
「頂上に行く手前でうなり声が聞こえた気がした。殺気みたいなものを感じた」(関 忍さん)
恐怖の瞬間をこう振り返るのは、北海道美唄市の関忍さんです。関さんは6月17日夜、市内の展望台でジョギングをしていました。
2023年も同じ場所でクマを目撃していた関さんは、クマよけスプレーを常備していましたが…振り向くと草むらから体長1.5メートルほどのクマが現れました。わずか10メートルという距離、絶体絶命のピンチです。
「そのまま間髪入れず走ってきた。うなり声をあげて走ってきたのでむちゃくちゃ怖かった」(関さん)
近づいてくるクマに決死の覚悟でスプレーを噴射。クマは関さんまで、あと3メートルほどにまで近づきましたが、沢へと逃げていったといいます。
「クマがいないのを確認しながら下りてきた。ドキドキですよね」(関さん)
関さんを救った「クマよけスプレー」には唐辛子の辛み成分のカプサイシンが含まれ、強い刺激でクマを追い払うことができるとされています。
2024年はすでに1000件以上、6月だけで773件と“令和最多”となった道内のクマの目撃件数。クマと遭遇する事故も増加傾向にあり、過去5年間で7人が死亡、多数のケガ人が出ています。
札幌市内にあるアウトドアグッズの専門店でも危機感を感じ取れる状況に…
「こちらクマスプレーのコーナーです。噴射距離12メートルという強力なものも発売されています」(小出 昌範ディレクター)
10メートルを超えて噴射が届く商品やコンパクトサイズのものまで。中には売り切れの商品もあり、以前と比べてクマよけスプレーの購入者が増えているといいます。
「鈴とか笛は今まで持っていたけれど、それだけだと心配だということでクマスプレーを携帯する人が増えた」(秀岳荘 白石店 後藤 恵輔さん)
一方、高まる関心の裏で恐怖や焦りからスプレーをうまく噴射できない人も多いようです。
「安全弁を外せなかった。慌ててしまって押しても出なかった。腰についてぱっと出してすぐ打てる練習はしていて損はない」(秀岳荘 森山 俊さん)
札幌市で開かれたクマよけスプレーの講習会には大勢の人が参加しました。
「よく間違われるのが持ちやすいからってこうやって持つ方がいるが逆で、オレンジ色の部分が安全弁になっていてこれがあると押せない」(森山さん)
参加した男性も登山中にクマと遭遇した経験がありました。
「登山道を下りているときに“でかい犬”がこっちに走ってくると思ってよく見たらクマ。そこからスプレーを買ったがなかなか使うことがなくて今回はよい機会」(参加した男性)
では、クマよけスプレーはどれほどの効果があるのでしょうか?
「直接(クマの)顔に当たらなくてもガスの成分がクマに届くだけで、クマは踵を返して逃げていく」(森山さん)
噴射されるとどのような状態になるのか。記者がスプレーの威力を体験してみました。
「スプレーの噴射威力中身を安全なものにかえて体験する。うわーすごいですね」
「噴射した瞬間に視界が真っ白になり遅れて臭いが来るので、クマであっても威力を感じるのだと思う」(すべて木村 洋太記者)
クマよけスプレーはクマと遭遇した時に人が反撃できる唯一の武器ともいわれています。
「昔はナタを持って歩くというのが常識とも言われていたが、なかなか振り回して攻撃するのは難しい。飛び道具なので持っておくだけで安心感は違う」
「最終的な非常手段です」(ともに森山さん)
クマよけスプレーで九死に一生を得た美唄市の関さんもこう言葉に力を込めます。
「クマスプレーがあるから少しは冷静な気持ちもあった。持っていてよかった。これがないと今ごろは私は生きていないかもしれない」(関さん)
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