群馬県みなかみ町立小学校で6月に実施された健康診断で、複数の児童が70代の男性医師に下着の中をのぞかれたなどと訴え、町教育委員会は保護者らに謝罪した。学校健診を巡ってはさまざまな意見が飛び交うが、専門家からは学校健診の後退を懸念する声もあがる。
今回問題となった健診を担当した男性医師は「思春期早発症」について診るため児童の下着の中を確認したと説明している。思春期早発症とはどのような病気なのだろうか。
群馬大医学部付属病院小児科の大津義晃講師(小児内分泌)によると、通常よりも思春期が早く始まる病気で、体が早期に成熟するため、一時的に身長が伸びた後に小柄のまま成長が止まってしまうほか、小学校低学年で陰毛が生えたり月経が始まったりし、本人の心理的負担も大きくなる。特に男の子の場合は、脳腫瘍など重大な病気が原因で起こるケースが7~8割を占めるという。
文部科学省監修の「児童生徒等の健康診断マニュアル」にも注意すべき疾病及び異常として掲載されているが、「同年代の子どもより一時的に身長の伸びが大きくなるので、周囲の大人は『大きくなったね』と喜び、病気を見落としてしまうことが多い」と大津講師。「身長に関しては、早期に治療を始めないと間に合わない。子どもの成長は取り戻せないので、早期発見が重要だ」と指摘する。
思春期早発症の目安として、男の子の場合は小学4年までに陰毛が生える、女の子は小学1年までに胸が膨らむ、小学2年までに陰毛が生えるなどが挙げられる。陰毛や乳房、精巣の大きさの確認に加え、血液検査や頭部のMRI検査などで診断する。
大津講師は過去5年で小学校の健康診断を3回担当し、教職員の立ち会いのもとで思春期早発症の疑いのあった3人の下腹部を確認したことがあるという。その際は全員の健康診断が終わった後、児童を個別に呼び出して「体が大人になるのが早すぎる病気かもしれない」と説明し、児童の了承を得て陰毛の有無を確認した。保護者らのクレームも来ていないという。
通常の診察時も、保護者と本人に診察や検査の内容、目的を説明し「プライベートな部分も診るよ」と伝えるといい、「きちんと説明すれば、子どもたちは内心イヤかもしれないけれど診察や検査をさせてくれる」と語る。
大津講師は、健康診断で上半身裸になったり、胸に聴診器を当てられたりするのを不快に思う子どもたちがいることについては「子どもの気持ちに配慮するのはとても大事。今回の問題を受けて、自身も学校健診をする時にはより丁寧に説明し、納得してもらうよう心がけなければいけないと思った」と話す。【日向梓】
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