漫画制作に参加した(右から)小渡さん、玉城さん、謝花さん、神山さん=沖縄県うるま市で2024年6月24日午後4時58分、日向米華撮影

 沖縄県石川市(現うるま市)の宮森小学校を襲った悲劇を多くの子どもたちに知ってもらおうと、事故の約15年後に後遺症で亡くなった男子大学生をモデルとした漫画の制作が進められている。制作には地元の高校生5人も参加し、未来へのメッセージをつなごうとしている。

 事故を語り継ぐNPO法人「石川・宮森630会」の久高政治会長(76)が「漫画であれば子どもたちがもっと関心を持ってくれるかもしれない」と発案。同小の2年生だった65年前、事故で全身の半分近くにやけどを負いながらも一命をとりとめ、大学生となって体育教師を目指していたが、後遺症により23歳で亡くなった新垣晃(あきら)さんをモデルにした。

事故の悲惨さを語り継ぐ「石川・宮森630会」の久高政治会長=沖縄県うるま市で2024年6月24日午後0時16分、日向米華撮影

 久高さんは、新垣さんが大学生になる前に通っていた県立石川高校に協力を呼び掛け、いずれも3年の小渡(おど)健斗さん(17)▽玉城慧心(けいご)さん(17)▽謝花(じゃはな)英偉士(びいと)さん(18)▽神山竪利(じゅり)さん(17)▽チャペル蒼空(そら)ジャックさん(17)--が手を挙げた。

 5人は生前の新垣さんを知る高校や大学時代の同級生らに話を聞き、人となりを探っていった。小渡さんは中学で陸上を始めた新垣さんについて、高校の同級生が「オリンピックに出られるくらい足が速かった」と口をそろえたことが印象的だったという。だが新垣さんは大学生の時、事故で負ったやけどの後遺症による発汗機能の低下で内臓が悪くなり入院を余儀なくされた。玉城さんは「普段は真面目で、ずっと自主練習をするような晃くんが入院していた部屋でたばこを吸っていて泣きそうになった」と証言してくれた大学時代の同級生らの話が心に残った。

 聞き取った内容は同会が整理した上で脚本家に渡し、漫画の完成にはさらに数年かかる見込みという。自身の祖母からも事故当時の話を聞いてきた謝花さんは「(事故当時の)ガラスが突き刺さったり、人が黒焦げになったりした光景は自分だったら耐えられない。そうした光景を目にし、その後も苦しんだ晃さんの体験談を通じて幅広い世代に分かりやすく伝わる漫画になってほしい」と話した。【日向米華】

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