浴室を清掃する有志メンバー=奈良市花園町で、山口起儀撮影

 奈良市の旧市街地「ならまち」にある老舗銭湯「花園新温泉」(同市花園町)を支援するプロジェクトチーム「ならまち銭湯部」が30日結成された。昭和レトロの懐かしい風情がただようが、老朽化が目立つため「長年、愛され続ける銭湯を守りたい」と地域住民らがクラウドファンディング(CF)などに取り組む。早速行われた“清掃イベント”では男女18人がぞうきんやブラシを手に学生の部活動のように楽しみながら汗を流した。【山口起儀】

 花園新温泉は1959年創業。生田弘子さん(90)と、娘の森田正美さん(63)、裕治さん(66)夫妻の3人が経営する。正美さんによると、設備の故障が近年相次ぎ、修理しても費用が追い付かないという。1月にはボイラーが故障。応急処置をしたが万全ではなく、現在は4時間半短縮し、午後3~9時に営業している。

 正美さんは一時、閉鎖も考えた。しかし、「常連客も多く、まだまだ存続させたい気持ちが強くなった」という。改修費用を工面するためCFを始めようと、町内で古民家宿「西村邸」を営む杉本雄太さん(38)に相談した。

 西村邸には風呂がなく、多くの宿泊客が花園新温泉を利用する。杉本さんはCFの運用を引き受け、6月27日から開始。同30日時点で30万円を超えた。8月27日まで募り、第1目標の100万円が集まれば時短営業で減った収益の補てんに充て、最終目標の300万円を達成すればボイラーを新調する。

 花園町周辺のならまちに、銭湯は20軒ほどあったが、現在は4軒にまで減ったという。

花園新温泉の清掃が終わり記念撮影する「ならまち銭湯部」のメンバー=奈良市花園町で、「ならまち銭湯部」提供

 杉本さんは「経営が行き詰まる前に手を加えなければ取り返しが付かないことになる。今は銭湯ブームで閉鎖されると残念に思う人も多いはず」という。CFだけでなく、長く愛されるためにソフト面のサポートメンバーを増やそうと、SNS(ネット交流サービス)などで「銭湯部」への参加も呼びかけた。

 清掃イベントには20~50代の男女18人が集まり、普段は手が回らない天井や床、タイル目地などの汚れを落としていった。月2回程度通う奈良市の会社員、杉下和也さん(45)は「昔ながらの浴槽や脱衣室の雰囲気が好き。この銭湯のためならできる限りの協力をする。絶対になくなってほしくない」と力を込めた。

 今後も週1回の清掃を軸に活動を続けていく。8月にはミニコンサートや卓球大会、落語会も開く。杉本さんは「多くの人に足を運んでもらい、銭湯の良さを感じてもらうきっかけにしたい」と話す。

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