[命ぐすい耳ぐすい 県医師会編](1337)
女性特有の病気の一つに子宮頸(けい)がんがあります。国内では年間約1万人がかかっており、約2900人が亡くなっています。
子宮頸がんのほとんどは高リスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染が原因です。近年は若い年代の女性(20代から増え始め、30~40代がピーク)で増えており、命を落としてしまうことや、多くの若い女性ががん治療のために妊孕(にんよう)性(妊娠する能力)を失ってしまうことが問題になっています。
しかしながら、子宮頸がんは予防可能ながんです。その方法は(1)HPVワクチン接種(2)子宮頸がん検診の受診です。HPVワクチンは定期接種ワクチンになっており、対象の方(12~16歳)は無料で受けられます。
HPVワクチンの定期接種が開始された2013年、接種後に原因不明の多様な症状を訴える報告が相次いだため、厚生労働省は全国の自治体にHPVワクチン接種を積極的に呼びかけるのを差し控えるよう求めました。それまで70%以上あったワクチン接種率は激減し、1%以下となりました。
HPVワクチンと「多様な症状」に因果関係があるのかどうか、その後の調査研究で詳しく調べられましたが、ワクチンを接種していない方にも「多様な症状」が出た方が同じ割合でいることが分かりました。ワクチンの安全性について特段の懸念は認められないとし、厚生労働省は22年度からHPVワクチン接種の勧奨を再開しました。現在、少しずつではありますが、定期接種率は上昇してきています。
HPVワクチン接種の勧奨が控えられていた期間に定期接種の機会を逃した方(1997年度~2007年度生まれで、合計3回受けていない女性)は、キャッチアップ接種が無料で受けられます。ただし、期間限定で来年3月末までとなっています。HPVワクチンの接種スケジュールは、3回接種終了まで6カ月かかりますので、残りの期間はわずかです。キャッチアップ接種ご希望の方は、早めの接種開始をお勧めします。(久高亘、琉球大学病院 産科婦人科=西原町)
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