海岸に漂着したプラスチックごみをカラフルなかごやコースターなどの小物に作り替える取り組みを、鹿児島県南さつま市で障害福祉サービスを担うNPO法人「ふう」職員、岡田香織さん(32)が続けている。通所者にも作り方を教え、7月20日に法人施設内に販売拠点を設ける準備をしている。岡田さんは「漂着量からすれば再利用量はわずかだけど、製品を手にした人が削減へ行動するきっかけになれば」と話す。
岡田さんは東京都新宿区出身。東京農工大農学部を卒業後、銀行に勤めたが、学生時代から発展途上国支援に興味があり、仕事を辞めて2019年に青年海外協力隊員としてマレーシアのボルネオ島に渡った。
隊員として、現地の人の自立サポートなどに携わる中、海岸で目の当たりにしたのが、国内外から漂着する大量のプラごみだった。「何とかならないのか」との思いを抱いて帰国。インターネットで廃プラを製品にする海外の取り組みを知り、見よう見まねで、製品を作るための機械を自作した。
既に廃プラ製品を作っていた人に教えを請おうと訪れた鹿児島県で、同県日置市が地域おこし協力隊員を募集していることを知った。「プラスチックで地域おこしを」と手を挙げると採用され、2年間活動することになった。
鹿児島県の3市(同市、南さつま市、いちき串木野市)にまたがる砂丘海岸「吹上浜」は外洋に面し、中国、韓国、果てはインドネシアからの漂着プラごみもあった。岡田さんは浜に通い詰め、ごみを拾って製品を作り続けた。
今年6月からは、「ふう」に移り、引き続き廃プラ製品作りに取り組む。通所者と一緒に作った小物などを販売する計画だ。作業は廃プラを洗ってはさみで細かくし、自作の機械で溶かして種類に応じた金型に入れ、成形するのが一連の流れ。製品になるまで10分ほどで、キーホルダー600円、植木鉢700円、ペンダントトップ1500円など、発売のラインアップをそろえる。
岡田さんから教わって作業する通所者は約10人。廃プラをはさみで小さくしていた橋口義行さん(58)は「作業は楽しい。可愛いものを作りたい」と意欲を見せる。
岡田さんは「企業からのオーダーに応じたものを生産するなどして経営を安定させ、通所者の生活が成り立つようにしたい。廃プラのリサイクルの仕組みをこの地で作り、日本全国に広めたい」と意欲を燃やす。【梅山崇】
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