松本剛明総務相は9日の記者会見で、長崎県大村市が男性カップルに世帯主のパートナーの続き柄欄を「夫(未届)」とした住民票の写しを交付したことについて、社会保障の実務面で「支障をきたす恐れがある」との見解を示した。住民票の交付は自治体の裁量が認められた「自治事務」にあたり、総務省の見解に強制力はないが、全国の自治体の対応に影響を与えそうだ。
「夫(未届)」「妻(未届)」の表記は男女の事実婚のケースで使われており、同性カップルに適用した同市の対応が注目された。同市は「事実婚とは捉えておらず、国の法律や制度を越権していない」とし、対応の妥当性について総務省に照会していた。
総務省見解は、同性カップルについて「法律上の夫婦ではないが準婚として各種の社会保障の面では法律上の夫婦と同じ取り扱いを受けているという前提がない」と指摘。その上で、事実婚と同様の表記の住民票を交付すれば、「公証資料である住民票の写しを交付する住民基本台帳法の運用として実務上の問題がある」とした。
住民票は住民基本台帳法に基づき住民の居住関係を公証する唯一の公簿で、住民票情報に基づき各種行政サービスが提供されている。事実婚は、健康保険の扶養家族に入れるなど、一部の社会保障施策で法律婚と同じ扱いだが、同性カップルには適用されておらず、松本氏は事実婚と同性カップルの続き柄を同一にすると「各種社会保障の窓口で、適用の可否を判断できなくなる」と説明した。
総務省は8日に見解を同市に伝えたという。松本氏は「(大村市は)総務省の助言を踏まえて判断いただければ」と述べた。
大村市の園田裕史市長は9日の記者会見で、総務省の見解を受け「修正はしない」と述べた。【安部志帆子、松尾雅也】
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