検事総長に就任し、記者会見する畝本直美氏(9日夜、東京・霞が関)=共同

「重い職責に身が引き締まる思い。誰もが活躍できる柔軟な職場環境を整備したい」。9日付で検事総長に就任した畝本直美氏(62)は戦後33代目にして初の女性だ。

検事生活36年のうち、10年以上を法務省で過ごした。非行少年らの居場所づくりに関心を深め、更生支援の専門家を何度もたずねた。「検察は刑事司法の一部。適切な法執行には更生の観点も欠かせない」と改めて気づかされたという。

捜査・公判部門でも実績を重ねた。上司や部下からは「緻密で抜け目のない仕事ぶり」といった評が聞かれる。東京高検検事長として、長年にわたる不透明な資金の流れを明らかにした自民党派閥の政治資金規正法違反事件を指揮した。

1988年の任官当時、同期検事41人のうち女性は4人。法務省によると、2023年は新任の4割が女性に。「今では珍しくなくなった」と感慨深げに語る。

歩んできた道は常に「女性初」という点で注目された。キャリアを切り開いた姿を多くの後輩が見つめる。「女性が一度でも経験したポストは性別が関係なくなる。検事総長もこうした積み重ねのひとつにすぎない」。先陣を切る気負いはない。

9日の就任会見では「検察が国民の信頼という基盤に支えられていることを心に刻み、常に検察の理念に立ち返り公正誠実に検察権の行使に努めたい」と抱負を語った。

(うねもと・なおみ、千葉県出身)

「不断の工夫が必要」甲斐前検事総長が退任コメント

甲斐行夫前検事総長(64)は9日、退任にあたりコメントを発表した。「時代や社会の変化に対応し『検察の理念』に立ち返りつつ最大限の努力を続けていくことが求められている」と強調。「捜査公判活動や組織運営のあり方などについて不断の工夫を重ねることが必要だ」と述べ、後任の畝本直美総長にエールを送った。

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