静岡県熱海市の土石流で、遺族と被災者が盛り土の現旧所有者、それに熱海市と県に損害賠償を求めている裁判で、原告側は7月10日、周辺の開発などで大量の水が盛り土に流れ込んだことが被害を拡大させたと主張しました。

2021年7月、熱海市で起きた土石流災害で、被災者や遺族は被害を拡大させたとされる違法な盛り土の現・旧所有者のほか、県や熱海市などに対し、あわせて約64億円の損害賠償を求めています。

地裁沼津支部では10日、約1年半ぶりに口頭弁論が開かれ、2023年12月に元の原告から分かれた新しい弁護団が違法な盛り土に流れ込んだ大量の雨水について言及しました。

新しい弁護団は、周辺の開発行為で地形が変わり、隣接する川の表流水が開発地に集まりやすい状態になっていたと説明しました。

さらに、開発地に流れる水を適切に分散させる排水施設に不備があり、違法な盛り土に大量の水が流れ込み被害を拡大させたと指摘しました。

新しい弁護団・杉田峻介 弁護士:
本来開発の図面上にあるべきはずの側溝がない。そういう箇所も存在する。この側溝に集まってくる量の水を4分岐して本来は流すはずなんですけど、(側溝が)ないんです

その上で、この危険な状態を作り管理していた現・旧所有者に加え、適切な管理を命じなかった県や熱海市にも法的責任があると主張しました。

次回は9月4日に非公開の協議が行われる予定です。

お伝えしているように、土石流の法的責任をめぐっては遺族と被災者が盛り土の前の所有者と現在の所有者、それに熱海市と県に対し損害賠償を求めて裁判を起こしています。

裁判で、遺族と被災者は盛り土の前の所有者と現在の所有者に対し危険性を認識していながら安全対策工事などを怠った過失があったと主張しています。

これに対し前の所有者は、これまで「盛り土の造成に直接関与していない」と主張、現在の所有者側は「前の所有者から引き継ぎはなく崩落の危険を認識していなかった」と主張しています。

また、熱海市に対しては「事業者への措置命令を見送った」などとして過失があったと指摘しています。

これに対し熱海市は「事業者が再三の行政指導に応じなかった」として法的責任はないと主張しています。

また、遺族や被災者は県に対し「熱海市に対する指導が不十分だった」「森林法を適用せず監督命令を出さなかった」などと、県の過失を指摘しています。

これに対し県は「是正を熱海市に求める法的義務ない」「森林法の監督権限を行使する法的義務もない」と主張しています。

それぞれが法的責任を否定している状況です。

裁判長は「2024年度中には誰が責任を負うのか決着をつけたい」と話していたということで、裁判所は危険性の認識についてどのような判断をするのか注目されます。

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