米モデルナ社のチーフ・メディカルアフェアーズ・オフィサー(CMO)を務めるフランチェスカ・セディア氏がインタビューに応じ、まだ実用化されていないノロウイルスワクチンの開発で、最終段階の臨床試験に日本を組み入れて実施する計画を明らかにした。
ノロウイルスは感染力が非常に強く、下痢や嘔吐(おうと)などを伴う。日本では食中毒の原因として知られ、災害時に開設される避難所や高齢者施設で集団感染が起きている。世界で毎年6億8500万人が感染し、途上国の子どもや高齢者を中心に20万人が死亡しているとされる。ウイルスの変異が多いことなどから、ワクチンは実用化されていない。
同社は、新型コロナウイルスワクチンで実用化したメッセンジャーRNA(mRNA)技術を活用する。ノロウイルスの主要な遺伝子型に対応したワクチンを開発中で、変異に合わせて速やかに改良できる。
ワクチンには、ノロウイルスに似たたんぱく質を作らせる遺伝情報を組み込む。接種すると、免疫細胞がたんぱく質を異物と認識して抗体を作り、実際にノロウイルスが体内に入った場合、効果的に攻撃できると想定されている。
米国での初期の臨床試験では、18~49歳と60~80歳の664人を対象に実施しており、その後の第2段階の試験では、高い免疫反応が確認できたとしている。接種による副反応は「許容できる範囲」だという。最終段階の試験の開始時期は未定だが、日本を含めて実施することで、早期の国内承認を目指すとみられる。
セディア氏は「(実用化の)見込みは非常に明るい」と手応えを語り、「世界中どこでも感染する可能性があり、私たちが最初にワクチンを作りたい」と述べた。【寺町六花、渡辺諒】
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