SNSで投資話を持ち掛け、金をだまし取る「SNS型投資詐欺」の被害が増加しています。今回、約1600万円の被害に遭った女性を取材することができました。その手口や女性の苦悩をお伝えします。
詐欺被害にあったAさん:
「こんなのにひっかかるなんて、もちろん予想していなかったですし、実感はあるけど実感はないような…先月がメインでお金を振り込んだけど、ものすごく前のようなことに感じる」
東信地方に暮らす40代の女性・Aさん。この春、およそ1600万円をだまし取られました。県内でも増加している「SNS型投資詐欺」の被害です。
「SNS型投資詐欺」はSNSの広告などをきっかけに架空の投資話を持ち掛けてだまし取るのが一般的な手口。恋愛感情を抱かせて投資に誘い込む「ロマンス詐欺」もあります。
SNSの広告をクリック…「桐谷理財博士」と友だちに
Aさんの場合も、SNS上の広告をクリックしたことが事の始まりでした。今年4月下旬のことです。
詐欺被害にあったAさん:
「インスタグラムで出てきた広告『優良株を教えます』のようなものをクリックするとLINEにつながって友だち追加をして。最近よく年金の話とか老後にいくら必要だとか、お金を貯めなくてはというのがあって、おいしそうな話ならちょっと聞いてみようかなって」
投資の勉強会 グループの名は「年金増額計画」
LINEに誘導されると、有名投資家を思わせる「桐谷理財博士」と名乗る者と「友だち」になれるようになっていました。
Aさんは軽い気持ちで「友だち登録」します。すると「さとうちづみ」というアシスタントを名乗る者を紹介され、「投資の勉強会を開く」というグループに招待されました。グループの名前は「年金増額計画」。既に80人ほどが参加しているようでした。
すぐに「投資サイト」で利益 貯蓄だけでなく消費者金融からも
Aさんはグループ内で勧められた原油や金融商品を扱う「投資サイト」に登録。まず30万円を振り込みました。
すると、すぐに「利益」の表示が…。
詐欺被害にあったAさん:
「(入金をすると)増えたような数字になって、ああちゃんと増えるんだなと、ちょっとだけ信じて、もうちょっと入れようかなと。次は70万円を入れて、それをどんどん繰り返してすごい金額になった」
どんどん伸びていく利益の表示…。
Aさんは貯蓄が底を突くと家族や知人、消費者金融に金を借りて入金するようになり、最終的には1600万円に上りました。
最初の頃は自分の口座に「出金」できたため、「投資サイト」を信頼してしまったと言います。
アシスタントの不自然な日本語メッセージ
ただ、Aさんにも「怪しい」と思える瞬間が幾度かあったと言います。最初はアシスタントから届いた音声を聞いたときです。
【実際に届いた音声】
「時間はほんとに早く過ぎてしまいますね。気づけば勝手に2週間楽しく一緒に過ごしましたね。この時間を共有してくれてありがとうございます。お忙しい仕事の合間にもゆっくり足を止めて心地よい生活を送ることを忘れないでくださいね」
Aさんはイントネーションに違和感を覚えました。他にも文章に不自然な日本語があったり、返事が定型だったりと、後から考えると「おかしい」と思えることがありました。
しかし…。
詐欺被害にあったAさん:
「あのときは、お金をどうやって準備しようという頭になっていた。自分の口座にあるお金がなくなったらカードローン、どうやったらお金が借りられるか、あの時は(金を)入れることに集中していた」
突然、口座凍結 「出金するには手数料必要」
「投資」を始めてから3週間ほど経ったある日、突然、LINEで口座凍結のメッセージが届きます。
(LINEのメッセージ)
「手数料を払わず出金し、逃げたメンバーがいる。口座を凍結するので出金するには手数料を払ってほしい」
利益の10%を手数料として別に支払わないと出金できないという通知。
表示上では、Aさんの利益は1億円に達していて、出金するには1000万円を用立てる必要がありました。
知人に相談 「詐欺ではないか」
困ったAさんは手数料を工面しようと知人に相談。すると知人はすぐに不審に思い「詐欺ではないか」と指摘したそうです。
その後、Aさんは警察に相談、被害届を出しました。
詐欺被害にあったAさん:
「(手数料)1000万円なんて絶対無理だから、まずだまされたって気づくよりも、どうしようと思って、それを払わないと。その日の夜眠れず、次の日の朝、同僚に話して説明すると『詐欺だから』って言われて。その瞬間、やっぱりそうだよなって思った」
急増するSNS型投資詐欺 県警「ネット上に様々なわな」
SNS型の投資詐欺はAさんのケースのように被害額が大きくなりがち。県警によりますと、今年1月から4月末までの被害は49件・およそ6億2900万円。1件あたり1280万円となります。件数・被害額ともに2023年の同じ時期に比べ大幅に増えています。
県警特殊詐欺抑止対策室・南沢朗室長:
「広告自体に著名人の顔写真が転用されていて、この人がやっているならと安心してだまされる。最近の手口だと、動画投稿サイトやインターネット上の広告、スマホのゲームの広告からという場合もある。インターネット上のさまざまなところにわなが仕掛けられている印象」
「SNS型」は「スマホ」で完結することから、第三者が介入しにくく、長期にわたってしまうケースが多いと言います。
アシスタントからは今もメッセージ 女性「あの時に戻れれば」
Aさんも…
詐欺被害にあったAさん:
「常に最初から言われていたのは『秘密の計画』なので周りには一切話さないでくださいという秘密厳守。(金を借りるとき)姉に話そうと思ったが、そのとき姉が何て言うかわからないけど、話していたら、止められていたかも」
Aさんは借金返済のため、掛け持ちでアルバイトを始めました。
今でもアシスタントから「手数料を振り込んでほしい」とメッセージが届くそうです。
詐欺被害にあったAさん:
「あの時に戻れればいいんです。あの時ってだいぶ最初ですね。ボイスレコーダーを聞いたとき、これは明らかに片言だよなって。あんまり分からないのに、投資やらないとって、分からないのに変なのに手を出してしまう。周りの親しい人にいろいろと話していれば間違いはなかったのかな」
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