うつ病などを発症し、精神科の診療を受ける人は年々、増加しています。しかし、心のケアを担う病院や医師が足りず、危機的な状況になっている地域も出てきています。

 「適応障害とうつ病と診断されています。ひどい月だと週1~2回仕事の休みをとったりするくらい体調が悪くなりやすい」


 釧路市に住む土屋祐喜さん。6年前から精神疾患を抱え、通院しています。夜、眠れないことが多く、睡眠薬を服用しています。

 「睡眠薬が無いと日々の生活にも強く影響が出てしまいます」

 土屋さんのように精神疾患を抱える人が年々、増加しています。

 2020年の厚労省の調査では、全国の精神科の患者は614万人と2017年から1.5倍増えています。

 また、仕事で精神疾患を発症し、労災認定された人は、2023年883人と5年連続、過去最多を更新。社会問題となっているカスタマーハラスメントが原因だったのは52人にのぼりました。

 一方、北海道では患者数に対して、医療の受け皿が足りていない地域もあります。

 「釧路市の住宅街にあるこちらのメンタルクリニックには800人の患者が通っていましたが、院長の急死によって、閉院となりました」(田中うた乃 記者)


 釧路地域では精神科医不足が深刻です。この3年間で、11カ所あった精神科の医療機関のうち、4カ所が診療を停止、縮小となりました。

 医師の高齢化や体調不良のほか、大学から派遣されていた常勤医が引き上げたケースも。相次ぐ診療停止や縮小に、他の医療機関にも影響が出ています。

 「市立釧路総合病院では、新規外来の予約が3カ月待ちになっているということです」(田中記者)


 精神科に年間のべ3万4000人以上が通う市立釧路総合病院では、他の医療機関からの転院もあり、外来患者は4年前に比べ、1500人以上増加。精神科の医師は6人で、1人あたり1日多い時で70人の患者を診察しているといいます。

 うつ病や適応障害と診断されている土屋さん。市内の病院の予約は6カ月待ちと言われました。そのため、現在は100キロ以上離れた十勝の病院に通っています。

「朝出て、帰ってくるのは夕方4時ごろ。緊急で受診したいときにすぐに行けないのが大丈夫かな?と思います」

 この事態を受け、釧路市は2023年、精神科の医療機関を開業する医師に最大5000万円を補助する制度を作りました。しかし、これまでに開業したのは1件の巡回診療のみで、医師を確保する難しさを感じているといいます。

 「医師もご家族がいて、本州から釧路まで来るとなると理解が得られなくて『(開業は)無かったことに』というお話もある。釧路のような地方都市で医師や看護師などの医療従事者を確保するのは非常に厳しい現状」(釧路市 健康推進課 板垣伸也課長)

▽自治医科大学の小池創一教授は

・幅広い領域を診察できる「総合診療医」の確保、育成

・オンライン診療などを活用し、効率化を図ること

・(患者側は)かかりつけ医を持つことや、時間外に軽い症状で受診する「コンビニ受診」はしないなどの取り組みが求められるとしています。

 釧路市では、現在、1件の精神科の医療機関の開業に向けて話が進んでいるということです。深刻な精神科医不足の解消が望まれます。

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