松山市災害対策本部会議の冒頭、土砂崩れで亡くなった犠牲者に黙とうをささげる市幹部ら=同市で2024年7月16日午前9時6分、鶴見泰寿撮影

 松山市で12日未明に発生し、倒壊した民家に住む3人が死亡した土砂災害を受けて、同市は16日に災害対策本部会議を市役所で開いた。野志克仁市長ら市の幹部約20人が参加し、被災者支援に全力で取り組む方針などを確認した。

城の営業、1カ月程度見合わせ

 冒頭、出席者が1分間の黙とうをささげた後、会議は非公開で行われた。会議では、石垣の安全性を確認する調査のため、松山城の営業を今後約1カ月間程度、見合わせることなどが確認された。

 市によると、松山城跡のほぼ全域を占める「城山公園」では、2010年7月に豪雨による土砂崩れで観光名所「愚陀仏庵」が倒壊して以降、土砂崩れが計3回発生していた。だが、これまで地盤の保護計画などの地盤対策は取られていなかった。城山公園は国の史跡に指定されているため、松山市が工事する場合には文化庁の許可が必要で、事前に計画を示さなければいけない。一方、危険樹木の撤去などを定める樹木管理計画は23年10月に策定しており、今後順次、伐採するという。

2024年7月1日にひび割れが確認された松山城付近の緊急車両用の道路。現在は道を支える擁壁とひび割れた部分の道路は撤去されている=松山市で24年7月1日午前8時46分(同市提供)

 会議後に記者団の取材に応じた野志市長は、松山城が建つ城山(城山公園)頂上付近の緊急車両用道路の復旧工事と土砂崩れの関連について「詳細な調査・分析をしたい」と述べた。市によると、松山城の天守の東側には救急車など緊急車両用の道路があり、23年6月30日から7月1日にかけての大雨で道路脇の擁壁が傾いていた。文化庁の許可を24年5月に受けて7月から復旧工事を開始。市は1日にひび割れを確認したため、9日までにひび割れ部分の一部道路と擁壁を撤去したうえで、雨水対策としてブルーシートで覆っていた状態だった。

 土砂崩れで被災した現場は、山の谷の地形から雨水が集中して流れ出る場所で雨水管が設置されていた。市の担当者は「土砂被害の報告や予兆はなく、事前に土砂崩れの可能性は把握できなかった」と説明した。

 市は16日午前6時、土砂崩れの現場付近に発令していた「緊急安全確保」を解除。また、10日からの大雨で家屋などに被害を受けた世帯を対象に、罹災(りさい)証明書の発行を同日から始めた。

 罹災証明書は保険請求の際などに使う書類で、発行には市職員の現地調査を受ける必要がある。被災者は市に申請書を提出し、被害認定調査を依頼する。

 申請は平日午前8時半~午後5時15分に市役所本館5階の危機管理課や22カ所の支所で受け付ける。問い合わせは同課(089・987・7000)。【鶴見泰寿】

 愛媛県の中村時広知事も16日、臨時の記者会見を開き、土砂災害の発生原因を究明するため地盤工学などの学識経験者や国、県、松山市で構成する技術検討委員会を設置する考えを示した。中村知事は「同様の災害が二度と起こらないよう、幅広い観点からの再発防止策につながっていくと思うので検討をお願いしたい」と述べた。

 また、今回の土砂災害で壊れた県管理の砂防施設について、今後の雨で斜面が崩壊する懸念があるため周辺の土砂などの撤去が終わり次第、応急復旧工事に着手できるよう準備していると明かした。【山中宏之】

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