旧優生保護法のもとで不妊手術を強いられた人たちが7月17日に岸田文雄 首相と面会しました。この中には静岡県浜松市の武藤千重子さんもいました。

浜松の武藤さんも首相と面会へ

武藤千重子さん:
(Q.岸田首相から聞きたい言葉は?)どうでしょうね。「すみませんでした」と言ってくれればいいかもしれませんが行ってみないとわかりません

静岡県浜松市に住む武藤千重子さん(75)。

国を訴えている1人で、弁護士や夫、それに盲導犬と官邸に入りました。

武藤さんは1977年に旧優生保護法のもと、視覚障がいを理由に不妊手術を強いられたとして国に損害賠償を求め、2024年5月、地裁浜松支部が憲法違反と判断し国に1650万円の賠償を命じています。

7月17日、岸田文雄 首相から謝罪の言葉を聞き、出席した原告がそれぞれの思いを語る中、武藤さんも心情を吐露しました。

武藤千重子さん:
視覚障がい者の武藤千重子といいます。悲しいです、本当。(医師など)どんな思いで2万5000人の手術をしたのか聞いてみたい。心の底から私は悔しく思います

岸田首相が誤ってくれたので前を向く

岸田首相は国が控訴している武藤さんの裁判も和解する意向を示し、武藤さんは17日を節目の日にしたいと語りました。

武藤千重子さん:
私の裁判も(一審の判決まで)4年かかり、やはり(年月が)かかりますね。(対象者の)年齢も上がってしまうし、(原告で)亡くなった人も6人いたと。もっと早く進めてほしいと本当に思う。(今回)岸田首相が謝ってくれたので、今度は自分も前を向いて歩こうと。旅行したり、サッカー観戦したり、いろいろなことをやろうと思っています。後ろばかり振り返っていてもしょうがないので、それはそれで終わりにする

改めて旧優生保護法について整理していきます。

旧優生保護法は1948年に制定され、その目的は不良な子孫の出生を防ぐことでした。

そしてこの法律の下、障害のある人たちなどに本人の同意なく不妊手術や中絶手術が行われていました。

1996年に「母体保護法」と改められ、強制的な不妊手術の規定などが排除されましたが、旧優生保護法のもと約2万5000人が不妊手術を受けたとみられています。

最高裁が国に賠償命じる

そして、手術を強いられた人たちが国に損害賠償を求めた裁判で、国は不法行為から20年で損害賠償を請求する権利が消滅する「除斥期間」が適用されると主張してきました。

しかし、最高裁判所は7月3日、「国が責任を免れることは正義・公平の理念に反する」と国に賠償を命じる判決を言い渡しました。

岸田首相は判決を受け7月17日、政府として謝罪した上で、最高裁判決以外の訴訟で除斥期間の主張は撤回して和解を進めること、訴訟を起こしていない人や配偶者の苦痛も視野に入れ補償を検討することなどを明らかにしました。

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