事件を伝える碑には早朝から多くのファンが犠牲者の追悼に訪れた。(18日午前、京都府宇治市)

36人が亡くなった京都アニメーション放火殺人事件は18日、発生から5年となった。作品ゆかりの地には追悼に訪れたファンの姿が見られた。「まだまだ未来があったはずなのに」。志半ばで夢を絶たれた犠牲者に祈りをささげた。

現場の第1スタジオ跡地(京都市伏見区)では、事件発生時刻の午前10時半すぎ、非公開の追悼式が営まれる。京アニによると、遺族やスタッフら計約150人が出席し犠牲者に黙とうをささげるという。「静かな環境を保つため」として一般の訪問などは控えるよう呼びかけている。

同社の本社がある京都府宇治市の「お茶と宇治のまち歴史公園」には事件を伝える碑が完成し、14日に一般公開された。「子どもたち、そしてすべての世代に届く確かな映像と物語」などと書かれた碑文の前に立つと第1スタジオ跡地のある方角を望むように設計されている。

「亡くなった方々にはまだまだすてきなアニメを作り出せる未来があったはずなのに……」。大阪市から訪れた介護福祉士の男性(48)は無念さをにじませた。

宇治市を舞台にしたアニメ「響け!ユーフォニアム」をきっかけに約10年前から京アニ作品のファンに。同市をはじめ、作品の舞台となり忠実に再現された街や地域を「聖地巡礼」でいくつも訪れてきたといい「京アニは自分の人生を豊かにしてくれた。感謝の思いでいっぱい」と語った。

事件後、毎年追悼のため京都に足を運んできたという神奈川県在住の会社員男性(35)は「祈りの場ができたことはファンとしてありがたい」と手を合わせた。

犠牲者一人ひとりを象徴した36羽の鳥が羽ばたく様子がデザインされた碑を見上げ、「改めて犠牲者の多さを痛感した。裁判がまだ続くようなのでしっかり見届けたい」と話した。

事件は2019年7月18日に発生。ガソリンがまかれた第1スタジオから出火し36人が死亡、32人が重軽傷を負った。今年1月に一審・京都地裁で青葉真司被告(46)が死刑判決を受け、控訴している。

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