名古屋地裁が入る名古屋高地裁合同庁舎=名古屋市中区で2019年9月30日、川瀬慎一朗撮影

 大村秀章愛知県知事のリコール(解職請求)運動を巡る署名偽造事件で、地方自治法違反(署名偽造)に問われた署名活動団体「愛知100万人リコールの会」事務局長の田中孝博被告(62)に対し、名古屋地裁(大村陽一裁判長)は19日、懲役2年、執行猶予4年(求刑・懲役2年)の有罪判決を言い渡した。

 起訴状によると、田中被告は2020年10月下旬、次男や広告関連会社の元社長=いずれも有罪判決が確定=と共謀し、佐賀市内でアルバイト3人に有権者71人分の署名を代筆させたとされる。

 検察側は公判で、田中被告は当時、次期衆院選に立候補する予定だったとし、団体代表を務めた高須克弥氏の後援を得ようと考え、リコール成立をもくろんだと指摘した。

 一方で弁護側は、必要数に達していない署名簿は返却すべきなのに、田中被告の返却要求を拒んだ県選挙管理委員会の対応は「証拠の違法収集にあたる」とし、「代筆は粗悪な出来で、虚偽にリコールを成立させようと本気で考えていたと認定することに無理がある」と無罪を主張していた。

 この事件の影響で、総務省は22年、首長へのリコールなど直接請求権の制度を見直す省令を改正。署名の紙に署名収集者の名前を記入する欄を設けたほか、署名偽造には罰則があるとの文言を追加していた。【道下寛子】

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