京アニの追悼式会場の献花台に供えられた折り鶴(18日、京都市伏見区)

2019年の京都アニメーション放火殺人事件は、犯罪被害者の支援策が拡充されるきっかけの一つとなった。この5年間で、給付金の増額などの施策に加え、全国で支援条例制定の動きが広がった。被害者の立場に寄り添った継続的な取り組みが欠かせない。

平成以降で最悪の犠牲者数となった事件の発生直後、京都府警は約100人から成る「被害者支援班」を発足。不安を抱える遺族や負傷者らの心のケアなどを担った。長期にわたる支援が不可欠で、昨年9月に始まった公判でも法廷に立つ遺族に付き添うなどの対応にも当たった。

こうした経緯も踏まえ、警察庁は23年10月、「犯罪被害者支援室」を格上げして「犯罪被害者等施策推進課」を新設。被害者や遺族への支援に関する業務のほか、関係省庁や自治体の取り組みの調整機能を担うなど政府全体の司令塔としての役割が期待される。

京アニ放火殺人事件は、働き盛りの大黒柱を失った遺族らの生活支援の重要性を認識させる契機ともなった。

被害者支援を目的とした条例づくりが各地で進み、今年までに全都道府県で制定された。犯罪被害者白書によると、市区町村レベルでも23年4月時点で3割強にあたる606市区町村で整備され、前年より153増えた。

国も今年6月、殺人などの被害者遺族向けの給付金について計算式を見直し、最低額を320万円から1000万円超に引き上げた。

琉球大学法科大学院の斉藤実教授(被害者学)は、この5年間の被害者支援を巡る動きについて「制度の必要性への理解が社会全体で浸透してきた」とみる。

ただ支援内容にはまだ地域差があるとして「国は被害者支援の施策を担う組織を立ち上げるなどして、専門人材の育成や財政支援といった面での後押しが求められる」と話している。

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