東海道新幹線が一部区間で運転を見合わせていることを伝えるJR新大阪駅のモニター(22日)

東海道新幹線の保守用車同士が22日午前、線路上で衝突し、始発から一部列車を除いて運転を見合わせた。JR東海は同日夕に運転を終日取りやめる計画を公表した。復旧作業が午後9時ごろまで続く予定のためで、運転を再開できる場合は大幅に本数を減らして臨時の列車とする。

事故は22日午前3時40分ごろ、豊橋―三河安城間で起きた。運休解消には長時間を要し、ビジネスパーソンだけでなく夏休みシーズンの旅行客にも影響が拡大した。新幹線を巡っては近年、保守点検を巡るトラブルが目立つ。原因究明と併せて再発防止の徹底が求められる。

今回の事故では線路に敷くための石を積んだ保守用車と石をならすための別の保守用車が衝突し、いずれも脱線。作業員2人が負傷した。事故車両は自力走行できず、クレーンでの搬出が進んだ。

日本大学の綱島均特任教授(鉄道工学)によると、一般に線路の保守作業は列車が運行していない夜間帯に行うため見通しの悪さや時間的制約といった難しさがあるという。

2015年には静岡市で東海道新幹線の保守用車同士が衝突する事故が発生。午前5時前に同市葵区の車両基地に戻る際に衝突した。

約2時間後に運転を再開し、約8700人に影響が出た。JR東海は作業員の前方不注意が原因だったとの調査結果を公表している。

今回は再開まで時間がかかっている。事故発生から12時間となる22日夕に保守用車を台車に載せる作業を終えたが、復旧作業にはさらに時間を要している。

綱島教授は「重い事故車両のつり上げ作業や、線路にダメージがないかの確認に時間がかかる」と説明する。

保守を巡るトラブルは近年相次いでいる。今年1月には東北新幹線などで架線の破損で一部の区間が停電し、運転の取りやめなどで約12万人に影響するトラブルが起きた。現場の線路上で復旧にあたっていた作業員が感電して重傷を負った。

JR東日本によると原因は架線を張るための重り装置の破損で、点検マニュアルの不備により作業員が不具合を見逃していたという。

4月には東北新幹線の福島駅構内で夜間に工事車両が故障した影響で、同新幹線など計76本が運休するなどし、4万人以上に影響が出た。

運行に大きな影響を及ぼす保守関連のトラブル防止は大きな課題で、新幹線を運行するJR各社は対策を講じてきた。

具体的には全地球測位システム(GPS)などを使って車両同士が接近した際に自動でブレーキや警報ブザーを鳴らす機能や、車両の位置情報を作業員がモニターで確認できるシステムが導入されている。

JR東海も06年以降、車両同士が一定程度近づくとブレーキと警報ブザーを自動的に作動させる装置を導入してきた。同社は「今回の車両に装置が搭載されていたか確認中」としている。

綱島教授は「防止装置の導入などの対策が進むなか、特に慎重に作業しているであろう新幹線の線路保守で衝突事故が起きた。事故原因の調査ではブレーキの作動状況などが今後の焦点となる」と話す。

今回の事故は国の運輸安全委員会の調査対象にならないため、JR東海の原因究明がカギとなる。綱島教授は「徹底した調査を進め、再発防止策を講じるべきだ」とする。

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