小林製薬の紅麹(こうじ)原料を含むサプリメントを巡る健康被害問題で、腎障害との関連が指摘される青カビの発生を製造現場が認識していたことが23日、分かった。品質管理担当者は報告を受けながら放置。同社が実態把握に着手したのは、今年3月に初めて問題を公表してからだったという。
同日公表した外部弁護士による事実検証委員会の報告書で判明した。健康被害に関する情報を得ていたにもかかわらず、医師に「副作用の報告はない」と事実と異なる回答をしていたことも明るみに出た。
同社は4月、弁護士3人で構成する検証委を設置。問題の把握から公表までの経緯、品質管理体制などの調査を進めてきた。
報告書は、紅麹原料を製造していた大阪工場(2023年12月に閉鎖)の製造ラインの状況を詳述。「問題の原因であるか否かは不明」としたうえで、ある関係者は聞き取りに対し「紅麹を培養するタンクの蓋の内側に青カビが付着していたことがあった」と証言した。
この関係者が品質管理担当者に報告したところ「青カビはある程度は混じることがある」と告げられたという。現場で問題が認識されながら放置されていた実態が浮かんだ。
問題となった製品の原料ロットの製造時(22年11月上旬)に乾燥機が壊れ、紅麹菌が乾燥されないまま放置された事案も確認された。紅麹原料の生産現場は品質管理を含めた業務が現場担当者に一任され「人手不足が常態化していた」という。
小林製薬が問題を公表したのは3月22日。これまでの間に「製造担当者に製造過程の問題を尋ねるなどして実態を把握する積極的な試みを行わなかった」としており、網羅的に問題点を洗い出す意識の低さが浮き彫りとなった。
症例報告を巡り、事実と異なる説明をしていたことも発覚した。同社は1月15日、医師から健康被害の最初の報告を受けた。内容は情報管理システムに記録されていたが、2月1日に別の医師から連絡があった際に「今までのところ急性腎不全の副作用の報告はない」と伝えた。
注意喚起するよう提案されたが、直後に検討した形跡はなかった。患者の症状を詳しく把握するために医師らと面会したのは、報告から3週間〜1カ月半が経過してからだった。
報告書は、同社で情報共有が機能不全に陥っていた状況にも言及した。
製品の安全管理部門の部長は「未知の重篤症例が4例あれば報告する」との社内規定を踏襲し、直属の上司にすぐに伝えなかった。こうした硬直的な対応は、健康被害との因果関係が明確な場合に限ると解釈し行政機関への報告が遅れた経緯を巡っても問題視された。
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