ギャラリートークを開催した山口吉彦さん(手前)と考彦さん=山形県鶴岡市の致道博物館で2024年7月14日、長南里香撮影
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 「雪国のアマゾン」として知られる南米アマゾンの資料約2万点を収集、保存している山形県鶴岡市の文化人類学者が、親子二人三脚で生物多様性を伝える企画展が注目されている。「自然と共生する先住民に謙虚に耳を傾けたら、きっとすてきな地球になれる」。持続可能な社会にしていこうと呼び掛ける。

 青く光り輝くメネラウスモルフォの標本や、世界最大の淡水魚ピラルクーの剥製、シャーマンが描いた顔の模様が神秘的なつぼ……。鳥の声が響く薄暗い密林をイメージした同市の致道博物館で、謎解きをしながら巡る企画展「探検!アマゾンワールド」が開かれている。

企画展で公開されているショウジョウトキの剥製=山形県鶴岡市の致道博物館で2024年7月14日、長南里香撮影
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 1000点以上の展示資料は、同市出身で「アマゾン先生」と呼ばれた文化人類学者、山口吉彦さん(82)が、在ペルー大使館付属学校の教師をしていた1971年から妻考子(なすこ)さん(2017年に死去)とともに十数年にわたって収集した2万点を超えるコレクションの一部だ。アマゾン奥地のインディオ集落を訪ねて交流を重ね、物々交換で収集した。

 資料は元々、山口さんらが同市に帰郷した後の90年代以降、市の施設で一般公開されていた。しかし、市の行財政改革の一環で2014年に施設が閉館。資料を継承するため、19年、長男考彦(なすひこ)さん(48)が一般社団法人「アマゾン資料館」を設立した。県内外から集まった寄付金約470万円を元に自宅を改修して収蔵庫を作り、ボランティアの協力も得て資料を移した。

 今回は資料移転後初の企画展で、今月14日には親子でギャラリートークを開催した。

 吉彦さんは資料を集めた当時を振り返り、ピラニアを捕らえたり、インディオ集落の部族と酒を酌み交わして「アミーゴ」(仲間)と受け入れられたりした思い出を語った。一方で、木材生産のための伐採や開発などで「地球の肺」とも呼ばれる熱帯林が減少している現状に触れ、「アマゾンの自然は人類の宝。自分たちだけでなく、孫や子の代まで維持していってほしい」と呼び掛けた。

 考彦さんは幼少期、父が狩猟用のやりや羽根飾り、剥製などさまざまなものを集める姿を「変わった人だなあ」と眺めていたという。今はその姿勢こそが「多様性というメッセージを強く発信する強み」だと気づき、展示を通して「多様性のメッセージを思い思いの形で感じたり、受け止めたりしてくれる人が増えていったらうれしい」と期待する。

 8月18日まで。期間中は無休。入館料は一般1000円▽高校生・大学生400円▽小中学生300円。【長南里香】

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