能登半島地震から約半年が過ぎ、輪島市では大きな火災に見舞われた朝市や倒壊した家屋に重機が入り始めた。輪島に震災をきっかけに結成され、地域の母親を中心に活動している「わじまミラクルず」という団体がある。「昨日よりも今日がちょっと楽しく」と活動する「わじまミラクルず」発起人に輪島への思いと葛藤を聞いた。

「わじまミラクルず」子どもの夏服を移動販売

「お子さんとお母さんと来てくださって思い思いに楽しんでいる姿を見て、胸がいっぱいなって。お手伝いができて良かったなと思います」

こう語るのは「わじまミラクルず」発起人の岡垣未来さんだ。「わじまミラクルず」では今月7日、子どもの夏服の移動販売を開催した。会場は被災したスペイン料理の店舗で、イオングループがこどもの夏服約700着、靴100足以上を用意し、多くの家族連れが訪れた。

「わじまミラクルず」発起人の岡垣未来さん
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輪島市では子ども服を売っていた洋服店が被災し、洋服の購入が難しい状況になっている。服を買うには車で金沢まで行かなくてはならず、一方で車がなく買い物がままならない人達もいる。こうした悩みの声に対して「わじまミラクルず」は、イオンに協働を依頼して、子どもの夏服の移動販売を行ったのだ。

「本当に求めているのか葛藤の日々」

しかしこの移動販売を企画する中で、岡垣さんたちには葛藤があったという。

「今の輪島のお母さん、お父さん方とお子さんが本当に求めているのかなと葛藤の日々でした。服を買いたいというニーズの方もいれば、まだ生活がそこまで追いつかないとか、生活ができていても気持ちがそこに向かわないという方もいるし、無料支援がある今はまだ支援として頂きたいという方もいて、そういう気持ちは尊重したいと思いました」

移動販売にはゲームもあって子どもたちが楽しんだ

また岡垣さんたちには、子どもたちや地域の方々に服を選ぶ体験を届けたいという思いもあったという。

「例えば購入された方にお話を聞くと、『どれも可愛くって、子どもが自分で選んでこの洋服を買ったんですよ』と話してくださるお母さんもいましたし、その子どもさんはアニメキャラクターのコスメみたいなものを一生懸命選んでいて、そういう姿を見たかったのが実現できたかなと思いました」(岡垣さん)

「昨日より今日がちょっとでも楽しく」

これまで「わじまミラクルず」では発災直後の2月にNPOカタリバが運営する地域の子どもたちの居場所づくりに参画し、季節のイベントや、ゲストを招いた読み聞かせ活動などを行った。また4月には市内の神社で「こども縁日」を開催し、400人を超える家族が来場した。こうした「わじまミラクルず」の活動について岡垣さんは、「昨日よりも今日がちょっとでも楽しくワクワクすればいいかな、ちょっと気持ちが温かくなればいいかな、じゃあ何ができるかなと企画を立てて活動しているんです」という。

輪島に向かう道路は復旧作業が続いている

一方岡垣さんは「自分たちが活動をやることによって、嫌な思いをされてしまわないかなとも考えます」と胸の内を語る。

「輪島は道路がぼこぼこだったり家屋が倒壊したままだったり、状況が良くなっているとは思いませんが、残った人たちには様々な支援がある。一方で輪島から移らざるを得ない人たちには、同じ被災をしているのに特別な支援はあまりありません。これには私も疑問を感じるし、市外で生活されている方から『十分なケアがされていない』という話を聞きます。だから自分たちのやっていることが励みになれるのか、迷いの繰り返しですね」

「やっぱり戻れるなら戻りたい」

輪島では食料品に関しては「今は事足りているかなと思います」(岡垣さん)。しかしドラッグストアやコンビニは開店しているものの営業時間を短縮しており、「例えば6時まで仕事をしている方は、帰宅時に空いているお店がない」という状況だ。また輪島に残った子どもたちは施設の損壊や指導者の避難で、スイミングなどのスポーツや習い事が難しくなっている。小学校も児童数の減少により市内6校が仮設校舎で2学期を迎える。

子どもたちは仮設校舎で2学期を迎える

岡垣さんはこう語る。

「市外に移らざるを得なくなった子どもたちが週末親族に会いに戻ってくると、『新しい環境ですごく良くしてもらっているし、学校でもみんなから受け入れてもらえて、先生たちも気遣ってくれる。だけどやっぱり戻れるなら戻りたい』と。戻ってくるとホッとするというのは、お母さんたちも言っていますが、それについて私は何もできないので話を聞くだけです」

次の夏服の販売は今月28日に輪島市内で行われる予定だ。

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