30分の1の大きさで再現した芥川の書斎=東京都北区田端6の田端文士村記念館で

 文豪・芥川龍之介が晩年を過ごした住宅の跡地に、書斎を実寸大で再現する計画を東京都北区が進めている。芥川の命日の24日には、北区の田端文士村記念館で「書斎『澄江堂』を大解剖! 芥川の書斎再現に向けて」と題した講演会が開かれ、約100人が集まった。【原奈摘】

 芥川は1914年から27年に自死するまで、現在の北区田端で暮らした。住宅は戦時中の空襲で焼失。跡地の一部を買い取った北区は、ここに芥川の記念館を建設し、2026年度中の開館とする計画を立てている。館内では、旧居2階にあった書斎を、同じ南向きで8畳間の実寸大で再現しようとしている。

 田端文士村記念館では2015年に、書斎を30分の1の大きさで再現した。北区はその際の調査を参考に、書斎を再現する方針だ。

 24日の講演会で同館の木口直子研究員は、当時の書斎の再現について、現存する写真や芥川の著作、周辺の人物の記述などから間取りや調度品を考えていったと説明した。

 たとえば『追想 芥川龍之介』(筑摩書房)によると、芥川の妻文(ふみ)は芥川の墓について「主人が愛用している座布団の寸法」と話した。そのため同館では、墓の大きさを採寸し、書斎の座布団のサイズを決めたという。

 一方、室内にかける扁額(へんがく)がどこに掲げてあったかは人によって記述が異なるという。木口さんは「何が正しいか判断が難しかった。証言にはミスもあるという前提で考えなければいけない」と指摘。今後再現する書斎について「緻密さよりも、芥川がいたことを体感できる空間づくりを目指す」と語った。

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