「RAA-進駐軍特殊慰安所-」の一場面=坂本正郁さん撮影

 劇団青年座による朗読劇「RAA―進駐軍特殊慰安所―」の上演が3日、東京都渋谷区文化総合センター大和田・伝承ホール(同区桜丘町)で始まった。敗戦後、日本各地に開設された「特殊慰安施設協会」(RAA)に視点を置く作品で、同劇団の創立70周年の記念公演の一つだ。台本と演出を手がけた伊藤大(まさる)さん(62)は「戦後の闇の部分を表現することで、戦時性暴力の問題に正面から取り組もうと思った」と言う。

 RAAは「レクリエーション アンド アミューズメント アソシエーション」の略。敗戦とそれに続く占領で不安が渦巻く日本では、政府の指示のもと慰安施設が東京を中心に各地に設置された。「特別女子従業員」「進駐軍サービスガール」などの名称で募集したが、実態は全く異なるものだった。舞台では敗戦の混乱のなか、生活のためにRAAの募集に応じ、慰安施設で過酷な日々を過ごした女性たちの心の叫びが語られる。

 連合国軍総司令部(GHQ)が日本の公娼(こうしょう)制度の廃止を決定したのを受け、RAAは1946年3月下旬に閉鎖されたが、女性たちには何の補償もなかったという。

 今夏で戦後79年。政府は防衛費の倍増などを打ち出すが、日本の社会は貧困や格差が深刻化している。

 「国体護持の名の下で行われたゆがんだ国策が、今の日本の劣化と結びついていると感じる。過去から私たちは学ばなければいけない」と伊藤さんは話す。

 6日まで。4~6日は同ホールで、俳優の津嘉山正種さんによるひとり語り「命口説(ヌチクドゥチ)」も上演。タイムテーブルなど詳細は劇団青年座のホームページ参照。【明珍美紀】

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