米国による広島への原爆投下から79回目の「原爆の日」を迎えた6日、広島市の平和記念公園(広島市中区)で平和記念式典が開かれた。松井一実・広島市長は平和宣言で、ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区への攻撃が続く世界情勢が国家間の疑心暗鬼を深めていると批判。市民社会に「核抑止力に依存する為政者に政策転換を促すことができるはずだ」と呼びかけ、結束して行動を起こす必要性を強調した。
「軍備競争を停止し、核の恐怖を止め、核兵器を根絶し、地域紛争の政治的解決を執拗(しつよう)に追求する」。平和宣言で松井市長は、レーガン元米大統領とともに東西冷戦を終結に導いたゴルバチョフ元ソ連大統領の言葉を引用した。その上で「為政者が断固とした決意で対話をするならば、危機的な状況を打破できる」と述べた。
日本政府には、2025年3月に開催される核兵器禁止条約の第3回締約国会議にオブザーバー参加し、一刻も早く締約国となるよう求めた。
岸田文雄首相はあいさつで、非核三原則の堅持を改めて表明し、「核拡散防止条約(NPT)の維持・強化のため、現実的かつ実践的な取り組みを進め、核軍縮に向けた国際社会の機運を高める」と述べた。昨年と同様、核兵器禁止条約への言及はなかった。
グテレス国連事務総長は「無謀にも一部の人々が核による威嚇を行っており、決して容認できない行為を非難しなければならない」とするメッセージを寄せ、中満泉事務次長(軍縮担当上級代表)が代読した。
松井市長と遺族代表が、この1年間で死亡が確認された5079人の名前を記した原爆死没者名簿を原爆慰霊碑下の奉安箱に納めた。名簿128冊の記載人数は計34万4306人となった。
市は式典にイスラエルを招く一方、パレスチナは日本政府が国家承認していないとして招待しなかった。ロシアと、同盟国のベラルーシも3年連続で招待を見送った。【根本佳奈】
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