日本私立大学連盟(私大連)は7日、国立大学の授業料について、上限を撤廃するなどして柔軟化し、収入増で国際競争力を強化すべきだとする提言を発表した。2兆円規模の「教育国債」を確保して私学助成金の拡充や給付型奨学金の充実などを進め、国公私立間の公平な競争環境を整備し、教育の質向上を目指すといった主張も盛り込んだ。
国立大の授業料は文部科学省の省令で定められた標準額をもとに各校が決め、最大で1.2倍まで増額できる。標準額は2004年の国立大の法人化に伴って導入され、05年度に年53万5800円に上げられてから20年間据え置かれている。
文科省によると、私立大と国立大の授業料格差は1.8倍ある。私大連は「国立大の学生は国から授業料減免を受けているとも言え、経済格差と教育格差の悪循環を助長している側面がある」と主張。上限を廃止するなど授業料を自由化し、収入で高度専門人材を育成すべきだとした。
田中愛治会長(早稲田大総長)は7日の記者会見で「授業料をいくらにすべき、というものはない。研究や地域振興など各大学の機能によって必要な金額は違う。一律ではなく裁量があるべきだ」と述べた。
生成AI(人工知能)の進展などで「学生の約8割の教育を担う私立大がどれだけ質の向上を図れるかが重要」とした上で、財源確保策として「教育国債」の創設を盛り込んだ。私学助成金や国立大に国から配分される運営費交付金に「教育国債」を足して教育財源と位置づけ、各大学向けと個人への奨学金などに再配分することを提案した。
文科省は24年度から、多子世帯や理工農系の学生を対象として、給付型奨学金の年収上限(目安)を380万円から600万円に広げた。私大連は「全ての所得中間層に対象を拡大し、家庭の経済的理由により私立大への進学を断念することのないようにすべきだ」と訴えた。
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