南海トラフ巨大地震との関連性を調査するため開かれた専門家らによる評価検討会=2024年8月8日(代表撮影)

 宮崎県で最大震度6弱を観測した8日の地震発生をきっかけに初めて南海トラフ巨大地震の臨時情報が発表された。専門家による評価検討会は「巨大地震注意」と判断。大地震はどのようなメカニズムで起こり得るのか。何に注意が必要となるのか。

 「新たな大規模地震の発生可能性が平常時と比べて相対的に高まっていると考えられます」。南海トラフ巨大地震との関連性を調べる専門家の評価検討会による記者会見は地震発生から約3時間後に始まった。冒頭、気象庁地震火山技術・調査課の束田進也課長は緊張感のこもった口調で、巨大地震への注意を呼び掛けた。

 評価検討会は地震発生から約45分後に緊急会合を開き、地震の発生状況を精査。評価検討会長を務める平田直・東京大名誉教授は会見で「普段よりも数倍、巨大地震が起きる可能性が高くなった」と指摘。「マグニチュード7・1の地震が起き、被害が出ている。それよりも大きな地震が起きる可能性が高く、十分注意してほしい」と述べた。

 具体的な備えについては政府や自治体からの指示に従うべきだとした上で、津波が起きた場合の避難経路や避難場所、家具の固定状況を改めて確認するよう求めた。

 今後起きる可能性がある巨大地震については南海トラフ巨大地震が想定される震源域の全体で注意が必要だと強調。平田氏は「もし最大クラスの地震が起きれば、東京の辺りは東日本大震災の時のような揺れ、房総半島でも高い津波が想定される」とし、四国・九州だけでなく、島しょ部も含めた広範囲で十分に注意が必要だとした。

今回の南海トラフ巨大地震「臨時情報」発表の流れ

 巨大地震注意の期間は1週間程度が想定されている。平田氏は「過去のデータを見ると直後が(地震発生の)可能性が高い」としつつ、「長い間尾を引くので1週間たったから安全というわけではない。いつ起きてもおかしくないと申し上げている」と強調した。

 夏の帰省ラッシュを控えた時期の地震発生を受け、会見では「帰省を控えた方が良いのか」との質問も出た。平田氏は「ビーチで水遊びしている人は、警報がでたら直ちに逃げる必要がある。それぞれのいる場所からどこにどういう経路で逃げるか、再確認してほしい。それができていれば夏休みで海水浴をしていただいても個人的には問題ないと思う」と述べた。

 評価検討会の内容説明を前に、気象庁が地震の概要について説明した別の記者会見は午後5時45分に始まった。担当者は会見冒頭、「津波を観測中!」と書かれたスライドを示しながら「海岸から離れてください」と強い口調で繰り返した。

 会見では準備されたスライド13枚を9分ほどで説明し、リアルタイムな情報が反映される気象庁のホームページも画面に表示しながら津波の高さや到達時刻を伝えた。気象庁内でも緊急対応に追われた様子がうかがえる場面もあった。【斎藤文太郎、井川加菜美】

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