日向灘に面した宮崎県日南市の港(8日午後)=共同

気象庁が初めて発表した南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)の対象は沖縄県から茨城県までの29都府県707市町村と幅広い。発生する確率は「数百回に1回程度」だが、地震学の観点で見れば平時より大規模地震の可能性は高まっていると言える。万が一を意識し、家具の固定や食料の備蓄など一人ひとりの備えが求められる。

気象庁は臨時情報の発表後も通常の生活を続けることが基本であり、「特段避難の必要はない」という。対象地域の住民には政府や自治体の呼びかけに応じた防災対応を取るよう訴えている。

まず確認しておきたいのが家具の安全だ。東京消防庁の調査では地震でケガをした人の3〜5割が家具の転倒や落下が原因だった。家具は転倒時にドアや避難路を塞がない場所に置き、寝る場所や座る場所、ストーブなどの近くも避ける事が望ましいという。

タンスなどはL字金具や突っ張り棒で固定し、食器棚には扉の開放防止の器具やガラスの飛散防止フィルムを設置することが効果的だ。いずれも市販されており、家具が地震時に「凶器」となるのを防ぐことができる。

水やレトルトのご飯など食料を最低3日分、できれば1週間ほど備蓄しておくのが望ましい。乳幼児がいる家庭は粉ミルクやおむつも欠かせない。スマートフォンの予備バッテリーなども生活を維持する上で必要となる。

備蓄を進める上で参考になるのが東京都のサイト「東京備蓄ナビ」だ。家族構成や性別、年齢などを入力すると、必要な備蓄品のリストを調べることができる。共同住宅で暮らす夫婦と子ども2人の4人家族の場合は、1週間分の必要量として、飲み水76リットル、レトルトご飯59食分、簡易トイレ105回分などが示される。

発災時のために「災害用伝言ダイヤル(171)」など、家族でお互いの安否確認の方法を決めておくことも重要だ。

実際に大きな揺れが襲った際に慌てるのは禁物だ。屋内にいる場合は揺れが収まった後に落ち着いて行動し、割れたガラスでケガをしないよう靴やスリッパを履く。「緊急地震速報」が発表されたらテーブルの下などに隠れ、照明の落下などにも注意する。屋外にいたらブロック塀、看板のあるビルなどには近寄らない。

沿岸部にいる場合、津波警報が出たら海岸から離れて高台に避難し、ラジオやテレビで行政情報を収集する。崖崩れや土砂災害に備え、急傾斜の地域からも避難する

避難時は、車の渋滞によって救急・救援活動に支障が出るのを避けるため、原則として徒歩が望ましい。高齢者や妊婦などがいる場合は車での移動も検討する。事前に安全な場所への退避ルートを把握しておくことも求められる。

「日経 社会ニュース」のX(旧ツイッター)アカウントをチェック

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。