大阪地裁判決を受けた記者会見で「異常な働き方だったと認めてくれた」と語る男性教諭=大阪市北区で2024年8月9日午後2時27分、土田暁彦撮影

 長時間労働で適応障害を発症したとして、東大阪市立中学の男性教諭(43)が大阪府と市に慰謝料など計330万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が9日、大阪地裁であった。小川嘉基裁判長は男性の負担軽減を講じなかった校長の注意義務違反を認め、府と市に計220万円の支払いを命じた。

 授業内容の複雑化や部活動の指導などで教員の負担は増しており、「ブラック職場」と呼ばれることが少なくない。この訴訟では過酷な勤務実態の一端が明らかになった。

 東大阪市は原告の求めに応じる形で、教職員らの残業時間が記された一覧表を裁判所に提出した。原告が2021年11月に適応障害と診断される直前までの7カ月分のデータ。大型連休と夏休みがある5月と8月を除き、残業が月100時間を超える教職員は50人以上いると読み取れる。1カ月で202時間と記載されている教職員もいた。

 残業が月に100時間を超える場合などの「過労死ライン」に達すると、公務災害の認定基準に当てはまることになる。心身のバランスを崩して休職した教員は増えており、公立学校では22年度に過去最多の6539人に上った。

 公立校の教員は残業代がない代わり、定額で一律支給の「教職調整額」が設けられている。長時間労働などの処遇改善に向け、国は調整額を月額給与の4%から10%以上に引き上げることを検討しているが、制度が維持されたままで改善につながるのかは不透明だ。

 原告の代理人を務める松丸正弁護士は「勤務時間を把握するだけでなく、医師面談など健康を確保するための対策が必要だ」と指摘。「給与に関する議論は大事だが、長時間労働を解消するためには人員を増やすしかない」と強調した。【木島諒子】

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