土砂崩れが発生した松山城付近の斜面(7月12日、松山市)=共同

松山市の松山城近くで3人が死亡した土砂崩れの発生から12日で1カ月となった。有識者らによる委員会が原因解明と再発防止を進めるが、不明点も多い。市の工事と土砂崩れとの関連性を指摘する声もあり、専門家は特定に時間を要するとして長期化も予想される。

「築城時に捨てられた土砂があり、広い範囲の水が集まっていると推測される」。7月29日の委員会終了後、国の担当者は現場の特殊性について説明した。現場付近は谷で、傾斜があり周囲からの水が流れ込みやすい。

岡村未対・愛媛大教授は、直前の降雨量では崩壊の条件に至らないとして「谷の横方向や、崩壊部分の上から、地中を通って水が流入していたと考えられる」と指摘。その結果崩壊に至ったとの見方を示した。

現場のすぐ上では、大きく擁壁が傾き道路に亀裂が走ったとして市が緊急で工事をしており、関連を疑う声も上がる。

愛媛大教授の森脇亮委員長は工事が直接影響したとは考えにくいとした上で「道路に亀裂があったのは土砂崩れの前兆現象として捉えられるのではないか」と指摘。原因究明について「拙速に結論を出すのはまずい」とし、慎重な検討が必要との考えを示す。

長期化の様相も呈する中で気をもむのは観光業界だ。松山城天守は安全を確認したとして、7月末に再開した。だが周辺に広がる商店街の事業者からは海外のツアー客など人出が戻っていないとの声も上がる。

中には前年比の売り上げが一時、3割まで落ち込んだケースも。関係者は「県外の人や観光会社に、城の再開や商店街が頑張っていることを呼びかけてほしい」と訴える。市の担当者は「原因や再発防止策を市からも発信したい」と話した。〔共同〕

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