望まない妊娠を防ぐために飲む緊急避妊薬が、県内でもオンライン診療で処方を受けられるようになった。一部の産婦人科クリニックで受け付けている他、今月から沖縄協同病院(那覇市)がオンライン診療を始めた。県内総合病院では初めてとみられる。同院の嘉陽真美医師は「緊急避妊薬はできるだけ早く飲んだ方がよく、入手の選択肢も多い方がいい。病院が近くにない地域に住む人も使いやすくなる」と経緯を説明する。(社会部・嘉数よしの)

 緊急避妊薬は避妊をしなかったり、失敗したりした場合に服用する薬で、「アフターピル」とも呼ばれる。性交後72時間以内に服用すれば、約80%の確率で妊娠を防げる。

 入手には医師の処方箋が必要で、近くに医療機関がなかったり、受診をためらったりすれば薬は手に入らない。市販化を望む声が上がっており、昨年からは一定の要件を満たす薬局に限定して、処方箋なしで販売する調査研究も進む。

 嘉陽さんはオンライン診療について「病院に来ると誰かに会ったり、待ち時間が長かったりするが、オンラインだと自宅や職場で受診して服用できる」とメリットを挙げる。

 望まない妊娠で中絶を希望する女性は少なくなく、県の母子保健の統計によると、15~49歳の女性人口千人に対する中絶実施率は5・8(2021年度)で、全国平均を上回る。

 性被害に遭った女性もいれば、家庭の事情で中絶を望む人もいる。嘉陽さんは「緊急避妊薬を望むのは若い人が多いと思われがちだが、40代以上の人も求める。ただ、周知が進んでおらず、妊娠中絶を考える時に存在を知り、『緊急避妊薬を飲みたかった』という声も聞く」と話す。

 薬局で処方箋なしで販売する試験運用が始まった当初、嘉陽さんが県内の協力薬局に問い合わせたところ、「3日間で5~6人から問い合わせがあったと聞き、驚いた。ニーズがあると実感した」。

 こうした状況を受け、沖縄協同病院はオンライン診療・服薬指導アプリ「CLINICS(クリニクス)」を通して、平日午前9時~午後3時に診療を受けられるようにした。県内在住の人が対象で、離島を含む遠隔地からもアクセスでき、近くの薬局で薬を受け取れる。クレジットカードで決済する。

 嘉陽さんは「緊急避妊薬は妊娠を防ぐ万全な方法ではないが、万が一に対応できるので知っておいてほしい。オンライン診療はその選択肢の一つ。将来的には緊急的ではない避妊方法を女性が選択できるようになってほしい」と語った。

 同院のオンライン診療はQRコードから。

(写図説明)スマートフォンなどで受けられる沖縄協同病院のオンライン診療画面

(写図説明)緊急避妊薬のオンライン診療を始めた経緯を説明する沖縄協同病院の嘉陽真美医師=2日(ビデオ会議システム「Zoom」より)

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