列車が通過する直前で線路を横断するエゾシカ=他移動根室市のJR花咲線で2015年2月21日午後3時33分、本間浩昭撮影

 北海道は13日、エゾシカの2023年度の推定生息数(南部除く)を73万頭と発表した。前年度から1万頭増え、過去3番目の水準。データ精度が低く他地域と分けている南部(後志、渡島、檜山)は3万~22万頭で、過去最多の水準だった。捕獲数(速報値)は全道で過去最多の15万頭だったが、減少に転じさせるには足りず、有識者は現状が「負け戦」だとして、対策の抜本的な見直しが必要と指摘する。

 エゾシカとの接触による交通事故は23年に5287件、列車衝突件数は23年度に3145件に上り、いずれも過去最多だった。22年度の農林業被害額は約48億円で、野生動物による被害の8割超を占める。このため、道は24~26年を「エゾシカ緊急対策期間」に設定し、雌の捕獲強化に乗り出している。

 道は道内を4地域に分けて推定生息数を追っており、増加傾向を減少に転じさせるために必要な雌の捕獲数を算出している。しかし、人手に限界があるため、3地域は目標が必要数に届いていないのが実情だ。過去最多の捕獲数15万頭も目標の18万5000頭を下回っており、7月の有識者会議では「このままでは個体数が順調に増える」という危機意識が共有された。

 道は捕獲数における雌の割合を引き上げるため、今年度から補助金や交付金を見直す。エゾシカを食肉処理施設に持ち込んだ場合、昨年度は1頭当たり8000円の補助金を狩猟者に払っていたが、10月から雌は2000円上乗せして1万円にする。

 有害駆除の市町村への交付金は、統計的に雌の捕獲割合が高まる冬に多く配分する。昨年度は通年で1頭当たり7000円だったが、今年度は4~1月は同6000円に減額し、代わりに2、3月を同8000円に引き上げる。道は「雌の捕獲割合が増えるように誘導することで、増加に歯止めを掛けたい」としている。

 推定生息数(南部除く)が最多だったのは11年度の77万頭で、南部はこの時、1万~4万頭だった。道は10~14年も緊急対策期間を設け捕獲費用の補助を強化し、18年度は65万頭に減少した。しかし、18年11月に恵庭市で誤射による死亡事故が発生。19年度まで国有林と道有林で狩猟ができる曜日が制限されたほか、新型コロナ禍による道外の狩猟者の減少などもあり、19年度以降は再び増加に転じた。【石川勝義】

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