第2次世界大戦で、自らを犠牲にして敵に突入した特攻隊の一つに「マルレ部隊」と呼ばれた水上特攻隊があった。16歳で「マルレ部隊」に入った元兵士に話を聞いた。
自分の命と引き換えに敵船へ
佐野博厚さん(96)は戦争当時、「マルレ部隊」と呼ばれた「陸軍海上挺進戦隊」に所属していた。
この記事の画像(19枚)「乗って敵船に体当たりする。帰ることはできませんので、自爆ですわ」
マルレ部隊は、モーターボートに爆弾を積んで、自分の命と引き換えに敵の船に体当たりする水上特攻部隊だ。
1944年6月、アメリカ軍による本格的な本土空襲が始まり、危機感を募らせた日本軍はアメリカ軍の船に有効な攻撃を仕掛けるためマルレ部隊を考案。この年に佐野さんは16歳でこの部隊に入隊した。
「いよいよ身を捧げる時がきたなと。本望だなと思いましたね。怖いということは全然ない。突入して戦果を挙げてお国のために殉ずるという一念ばかりでした」
佐野さんの部隊は終戦の4カ月前、本土決戦に備えて沿岸を守るため熊本県に展開した。しかし、佐野さんに出撃命令はなく終戦を迎えた。
マルレ部隊は隊員の約7割が戦死したという。その多くは16歳から25歳までの若者だった。
「空に海に陸にほとんど戦死してますわ。将来優秀な生徒が皆亡くなった。
(戦争の話を伝えることは)我々に残された使命だと思っている。平和のありがたさ、戦争の愚かさ、本当の体験した者だけが教えられる本音だと思う。平和な争いのない世界にしてほしいなと思いますね」
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