8月15日は終戦の日です。

「特攻隊」について知っている人もいると思いますが、「水上特攻隊」はご存じでしょうか?

当時16歳で現在96歳の元兵士の方からお話を伺うことができました。

戦争の体験者は年々少なくなっていますが、今日はその貴重な声に耳を傾けてください。

1人の兵士が乗り込む武骨なボート。
映像には水上を滑るように走る様子も残されています。

このボートは第2次世界大戦当時、日本軍の最高機密だった水上特攻兵器「マルレ」。

FNNは、この貴重な映像をアメリカ国立公文書館から入手しました。

この水上特攻隊、通称“マルレ部隊”に所属していた元兵士、佐野博厚さん(96)。

「マルレ」元水上特攻兵・佐野博厚さん:
乗って敵船に体当たりする。爆弾を落として何秒かで爆発します。それまでにはその範囲内で逃れることはできませんので、自爆ですわ。

ベニヤ板で作られたモーターボートに重さ250kgの爆雷を積み、自らの命と引き換えに敵の船を破壊する特攻兵器、マルレ。

本来の目的を隠すために連絡艇とされ、その頭文字を取ってマルレと呼ばれました。

FNNがアメリカで新たに入手した写真のマルレには、左右に2個の爆雷が残されたままでした。

「マルレ」元水上特攻兵・佐野博厚さん:
このマルレで、特攻隊で、フィリピンやら沖縄で出陣して、みんな亡くなってます。みんな未成年者ばっかり。17歳18歳ばっかりです。

佐野さんは敗戦の前の年の1944年、16歳で陸軍に入隊し、船舶特別幹部候補生として訓練を受けたあと、海上挺進戦隊へ。
それがマルレ部隊でした。

マルレの任務は夜。
敵の輸送船などにぎりぎりまで近づき、爆雷を投下するというもの。

「マルレ」元水上特攻兵・佐野博厚さん:
(マルレには)バックギアあれへんもん。前進しかない。

前進しかできない船、マルレ。
爆雷投下後に生きて戻ることは難しく、アメリカ軍からはスーサイドボート、「自殺艇」と呼ばれました。

自らの命を犠牲にする特攻隊への転属命令を受けた佐野さん。
しかし、恐怖を感じることはなかったといいます。

「マルレ」元水上特攻兵・佐野博厚さん:
怖いと言うことは全然ない。全然ありません。覚悟はしていました。いよいよ身を捧げる時がきたなと思った。突入して国のために奉公する。本望だなと思ったことはあります。

国のために命を捨て、忠義を尽くすことが尊いという軍国教育が徹底されていた時代でした。

佐野さんは日本沿岸を守ることを目標に、熊本・天草で出撃に備えていましたが、79年前のきょう、玉音放送で終戦を知り、出撃することはありませんでした。

水上特攻マルレ部隊では、16歳から25歳の若者が中心となって祖国に命を捧げました。
戦死した隊員は7割に当たる、1600人以上にのぼります。

「マルレ」元水上特攻兵・佐野博厚さん:
当時の学生がペンを伏せて銃を持って各地に散らばって、空に海に陸に、ほとんど戦死してますわ。将来優秀な生徒がみんな亡くなっちゃった。

2年前にFNNが取材した浜槙人さん(当時97)もマルレの元隊員です。

「マルレ」元水上特攻兵・浜槙人さん:
志願したり(列の)一歩前に出ろとか、そういうことはなくて、隊員が並べばそれがみんな特攻隊。みんながそうだもんで、どうしようもないと思ったけど、本心は死にたかなかった。

浜さんは1944年、19歳で陸軍に入隊。
しかし日本軍はこのころ、マリアナ沖海戦で壊滅的な打撃を受け、サイパン島が陥落。

連合国軍による本土空襲が本格化しました。

日本軍は戦局の逆転を狙って特攻作戦を考案。
その1つがマルレ部隊でした。

1945年1月の夜、浜さんはフィリピンの海へ出撃。
しかし…。

「マルレ」元水上特攻兵・浜槙人さん:
わしの船はね、エンジン故障して動かなくなって、他の連中を呼び止めたけど、エンジンの音で俺が呼んだ声なんて聞こえやしねえ。みんな行っちゃって…。

浜さんら4人を乗せたマルレは、食料がないまま大海原を20日間漂流。
浜さんの第3中隊32人のうち、生き残ったのは浜さんともう1人だけでした。

「マルレ」元水上特攻兵・浜槙人さん:
人間は死ぬまでのところまで追い詰められてもね、生きたいと思う。死にたかねえで。

終戦から79年。
昭和、平成、令和と戦後の日本を生き抜いた2人の元特攻隊員が伝えたいことは同じです。

「マルレ」元水上特攻兵・浜槙人さん:
戦争なんてやっちゃいけないということをみんなに、子や孫に言いたい。戦争なんてやっちゃいけないよ。殺しっくら(殺し合い)だで。

「マルレ」元水上特攻兵・佐野博厚さん:
96歳にもなって我々に残された使命だと思っている。戦争の愚かさ。平和のありがたさ。本当の体験した者だけが教えられる本音だと思う。平和な民主主義な…争いのない世界にしてほしいと思う。

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