2022年9月、静岡県牧之原市にある認定こども園の送迎バスに3歳の女児が置き去りにされ死亡した。検察は後にバスを運転していた当時の理事長 兼 園長とクラス担任の2人を業務上過失致死罪で在宅起訴し、2024年4月23日に初公判が開かれる。
(以下は、2023年4月20日に配信した記事の再掲載で、データ等は当時のものです)

家族の主役 失われた幼き命

生まれたばかりの妹にミルクをあげているのは河本千奈(かわもと・ちな)ちゃん、3歳。静岡県牧之原市で認定こども園の送迎バスに置き去りにされ命を落とした。

「娘に対する申し訳ない気持ちと、園に対する怒りでこの7カ月間過ごしてきた」

千奈ちゃんの父親はそう語る。

事件が起きたのは2022年9月5日。

千奈ちゃんは認定こども園・川崎幼稚園の送迎バスに朝から5時間以上取り残され、重度の熱中症で死亡した。

仕事中、妻から連絡を受けた父親は搬送先の病院に駆けつけた。

千奈ちゃんの父:
僕たちは泣き叫びながら千奈の名前を呼んだんですけど、答えることはもちろんできない状態で、心臓マッサージを受けていたんです。心電図が動いていたので「まだ千奈の脈があるということなんですか?」と伺いましたが、「マッサージをしているから動いています。止めるとゼロになります」と聞いて、そこで本当に助からないんだということを叩きつけられたというか…

活発で家族の主役、ムードメーカーだったという千奈ちゃん。妹を大切にする姿が動画に残されている。

千奈ちゃんの父:
朝起きたらまず初めに次女の顔をのぞき込んで頭をなでてくれたり、ミルクをあげるのも手伝ってくれたり。お姉さんとしてたった3カ月でしたけど、よくやってくれたと思っています

置き去り…ずさんな安全管理

当時、送迎バスを運転していた元園長は車内を十分に確認していなかった。

朝、教室に千奈ちゃんの姿がないことに気付いていながら、園から保護者へ連絡もなかった。

千奈ちゃんの両親は、川崎幼稚園を運営する学校法人・榛原学園に対し、廃園または他の法人への運営受け渡しを求めてきた。

信頼失墜 市長「法人が責任を」

牧之原市・杉本基久雄 市長:
榛原学園は今回の事故により、ご遺族はもちろんのこと、社会に大きな悲しみと憤りを広げ、幼児教育保育の信頼を失墜させました

両者の間では、榛原学園が指定管理者として運営する市立細江保育園の指定取り消しについて協議が始まっている。

契約の期限は2025年3月だが、前倒しして取り消したい市と続けたいとする学園の主張はかみ合わない。

牧之原市・杉本基久雄 市長:
(職員の)自責の念や法人との思いが食い違っている。そういうところから辞めていった職員が何人もいるんです。ですから、法人は責任取らないけど、働いていた人たちは自ら責任取ってるんですよね。そこも重く受け止めてほしい。そうじゃないと千奈ちゃんは報われないし、辞めていった職員も報われないですよ。私はそれを強く言いたい

一方、榛原学園はテレビ静岡の取材に対し、弁護士を通じて文書で回答を寄せている。

「契約以前に返還する理由がないので、少なくとも令和7年3月までは運営すると(市に)述べています。期限まで運営することが契約上の義務であり、法人としての役割と理解しております。保育園は子供と保護者のためにこそ存在しており、その園に通いたい、預けたいと希望する子どもたちや保護者が一人でもいれば、運営すべきものと考えております」

両者の協議は今後も続けられる方針だ。

「行政を動かすために生まれたのではない」

保育の現場で幼い命が失われた、あってはならない事態。

事件の後、国・県・市が動き、安全マニュアルの整備や対策機器の導入が急ピッチで進められている。

千奈ちゃんの父:
安全装置義務化になって「これで安全です」と言われても千奈はもう戻ってこない。行政のために行政を動かすために娘は生まれてきたのではない、そういう気持ちでいます
(Q.千奈ちゃんに伝えたいことは?)
1つしかないです。妻も私も助けられなくてごめんなさいと。それしかないです

子どもの安全を守るため、誰がどうすればいいのか。何をどこまで進めればいいのか。時間はない。夏はもう目の前まで来ている。

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