障害者の移乗で使うリフトを操作するバシリサ・ワマルワさん(左端)とグラディス・ケルボさん(左から2人目)。右端は公文和子さん=大阪府枚方市のわらしべ園で2024年7月19日、新土居仁昌撮影

 アフリカ東部、ケニアの障害児通所施設「シロアムの園」の公文和子代表(55)とケニア人スタッフ2人が7月に来日し、交流のある大阪府枚方市の障害者支援施設「わらしべ園」で入浴や食事介助の実習をした。近い将来に備えて成人の介助方法を学び、福祉従事者としての意識の向上を図る目的で、最新の機材も操作した。2人は「シロアムには入浴やトイレで困っている子たちがいっぱいいる。何をするのが彼らにとって一番よいことなのか、考えるきっかけにしたい」と話していた。

 「シロアムの園」は、アフリカでの活動歴が長い小児科医の公文さんが2015年、首都ナイロビの郊外に開設した。「シロアム」とは、イエスが盲人を癒やした池の名前で、キリスト教系の施設だ。現在は55人が通っているが、開設当初に就学前後だった子供たちも10代半ばから後半に成長した。しかし社会福祉制度が未整備のケニアでは成人のための障害者施設がほとんどなく、子供たちも今のままでは行き場所がなくなるという。

障害者の食事を介助するグラディス・ケルボさん=大阪府枚方市のわらしべ園で2024年7月20日、新土居仁昌撮影

 実習を受けたのは、副代表で作業療法士の資格を持つバシリサ・ワマルワさん(35)と、料理長でもある介護職員のグラディス・ケルボさん(45)。「わらしべ園」には身体障害者と知的障害者がそれぞれ約40人入所しており、2人は職員に指導を受けながら成人障害者の介助を体験した。

 車椅子からベッドなどへの移乗で使うリフトの操作では、乗り心地を確かめ、利用者と介助者両方の立場で利便性を体感。バシリサさんは「心地よくて安全。人の力だけではできないことが可能で、子供たちにとってもすごくよい介助装置だ」と感心していた。

 食事介助では、飲み込みが難しい障害者のために、とろみを付けただしをご飯と総菜にかけてスプーンで食べさせた。職員から「3~4口に1回ぐらい、お茶を飲ませるとスムーズに食べてもらえる」などとアドバイスを受けるとうなずいていた。

柔道療育にも力を入れているわらしべ園で、柔道着を身につけて柔軟体操をするバシリサ・ワマルワさん(前列右)=大阪府枚方市で2024年7月20日、新土居仁昌撮影

 わらしべ園での実習は、2週間の日本滞在中、前半の1週間を充てた。グラディスさんは印象に残った点について、「介助者と障害者のコミュニケーションが緊密で、やってほしいことと、ほしくないことを上手に聞き出していた」と話した。

 公文さんは「医療など専門の資格がなくてもできることはたくさんあることを知ってほしかった」と、実習が生かされることを期待していた。

 一方、受け入れ側となった社会福祉法人わらしべ会の辻和也理事長(57)は「我々にとっても普段と違う視点を持つことができた。新たな気持ちで仕事に取り組みたい」と話していた。【新土居仁昌】

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