札幌地裁=岸川弘明撮影

 2019年の参院選期間中、街頭演説をしていた安倍晋三首相(当時)にヤジを飛ばして北海道警に排除されたとして、札幌市の男女2人が道に計660万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第1小法廷(深山卓也裁判長)は道側と原告男性側の上告をいずれも退ける決定を出した。19日付。男性を敗訴としつつ、女性に対する道警の対応については違法と認めて55万円の支払いを命じた2審判決が確定した。

 裁判官5人全員一致の判断。小法廷は「上告理由に当たらない」と述べた。

 1、2審判決によると、原告2人は19年7月15日、札幌市であった街頭演説中に「増税反対」「安倍やめろ」とヤジを飛ばした。警察官は2人の肩や腕をつかみ、別の場所に移動させた。女性がその場から移動すると、警察官は「今日はもう諦めて」などと言って約2キロにわたり女性につきまとった。

 1審・札幌地裁判決(22年3月)は、ヤジに伴ってトラブルが起きる様子はなかったと指摘。警察官が2人の政治的な表現行為を制限したことは憲法が保障する表現の自由を侵害したと認め、男性に33万円、女性に55万円をそれぞれ支払うよう道に命じた。

 これに対して2審・札幌高裁判決(23年6月)は「(男性が)聴衆から暴行を受けたり、安倍首相らに物を投げたりする危険性が切迫していた」として男性を逆転敗訴とした。女性に対する賠償命令は維持した。【巽賢司】

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