アウトドアを取り入れた防災を考えるシリーズ「アウトドアで防災を考える」。秋田県内は7月下旬に記録的大雨に見舞われ、大きな被害が出ていることから、8月は被災地で求められていることやボランティアの活動について伝えている。

記録的大雨からまもなく1カ月。復旧が進む一方で、「あの日のまま」の場所はいまだ数多くある。

7月24日から降り始めた大雨。これまでに分かっているだけで農林水産関係の被害額は119億円を超え、特に収穫を控えた水稲の被害が深刻だ。河川や道路などの土木関係は151億円余りに上っている。また、これまでに約300の住宅で浸水などの被害が出ている。

あれからまもなく1カ月がたとうとしているが、氾濫した川の周辺ではあの日のままの光景が広がっている場所があり、被害の大きさを物語っている。

地区を流れる琴浦川が氾濫したにかほ市平沢。基礎の部分が崩れ落ちた住宅は、立ち入ることができないままだ。このほかにも大きな被害を受けた住宅は多く、「住み続けることを諦める」というつらい決断をした人もいる。

被害が出た直後からこの地で生活再建に向けた支援にあたっているのが、日本赤十字秋田短期大学の及川真一さんだ。

及川さんと町を歩くと、足を止めたのが道路の側溝。一目見ただけでは災害の爪痕は感じられないが、ふたを開けてみると泥で埋め尽くされている。いまのままの状態で雨が降ると、道路が再び水に覆われる可能性がある。

続いて及川さんが訪れたのは、この1カ月間通い続けている住宅。床上まで浸水し「半壊」と認定された。及川さんなどボランティアが床の下に潜り、懸命に泥をかき出した。

 日赤秋田短大・及川真一さん:
「床下の断熱材が水を含んで垂れている状態だったので、断熱材を剥がして泥をかき出して、乾燥させて、ようやく乾いてきている。日の当たる場所と風通しの悪い場所の乾燥の度合いがだいぶ違うので、日が当たらない場所は乾くのに1カ月くらいかかる」

泥かきなどが終わった住宅はサーキュレーターで乾燥させる。及川さんは、再び生活ができるように住民と一緒に検討を重ねている。

また及川さんは、住民が前を向けるように心がけていることがある。

「過去を思い出さないように現場周辺の泥をすべてきれいにすること。泥かきをした場合は泥が床とかサッシなどに付いてしまうので、泥をかき出すだけでなく、掃除までを最終ゴールにしている。終了後には窓ふきもするし、サッシの掃除もするし、床の掃除も徹底している」と及川さんは話す。

少しずつ生活を取り戻す兆しがみえる一方で、復旧は道半ば。支援は次のステージへと移り始めている。

及川さんは「活動をずっと続けていくことによって、泥がなくなり、家財道具も出して、これから各家々で『どう生活再建してくか』という長いステージに入っていく段階。これからが住民がいろいろなサポートが必要。手続き、相談窓口などボランティアセンターが対応していく」と先を見据える。

災害が残す爪痕は深く果てしない。そのことをしっかりと心にとめ、一人一人が災害を自分事として考える必要がある。

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