東京電力・福島第一原子力発電所で、きょうも行われている処理水の海洋放出。8月24日で開始からちょうど一年となる。現状とこれからの課題を、あらためて考える。
<風評被害への不安と向き合った一年>
8月23日・午前7時。
福島県南相馬市の真野川漁港に、漁を終えた漁船が戻ってきた。カニやカレイなど、きょうも新鮮な常磐ものが並ぶ。
2023年8月24日に開始された、処理水の放出から一年。漁業関係者にとって風評被害の懸念と向き合った一年だった。漁師は「我々がいくら反対しても、流してしまった。流せば流したものの勝ちみたいで」と語る。
<お墨付きも 約束は?>
増え続けるタンクを減らし、廃炉に向けたスペースを確保するために開始された処理水の放出。
IAEA・国際原子力機関のお墨付きを得て開始された一方、地元の漁業関係者に伝えた「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」との約束には、明確な決着がつかないままのスタートだった。
<風評被害の実感と実態>
あれから一年。風評被害の影響について話を聞くと、漁師からは「風評被害って、あまり周りからも聞こえていない」、仲買業者は「そこまで価格が下がるようことは、なかった」との声が聞かれた。
一方で、福島県などによると「沖ナマコ」の卸売価格は、2023年と比べて1000円以上下落した。
処理水の放出以降続く中国の禁輸措置が関係しているとする指摘もあり、こうした影響からこの一年間で東京電力から漁業関係者に支払われた賠償は、2024年7月末日時点で320億円となっている。
<国の責任を果たす>
8月23日に齋藤経産相を訪問した、全国漁業協同組合連合会の坂本雅信会長。「たとえ、今後数十年の長期にわたろうとも、アルプス処理水の処分が完了するまで、政府として責任を持って取り組んでいきます」と、齋藤経産相は処理水放出へ国の責任を果たすと強調した。
現在、処理水を保管しているタンクの数は約1000基。
東京電力は2025年1月ごろから「タンクの解体」に着手する方針だ。
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