カナダの国立公園で発生した山火事で立ち込める煙=西部アルバータ州で2024年8月14日、L Neufeld/Parks Canada・ロイター

 カナダで2023年に猛威を振るった山火事で放出された二酸化炭素(CO2)は、日本の年間排出量を大きく上回るとの分析を米航空宇宙局(NASA)などの研究グループがまとめた。炭素吸収源として地球温暖化の抑止に重要な森林が大規模に焼失し、その長期的な機能に懸念を生じさせる事態だとしている。英科学誌ネイチャーで28日に発表した。

 23年にカナダ全土で発生した山火事による森林焼失面積は1500万ヘクタールで、過去40年間の平均の7倍近くに達した。カナダメディアによれば、延べ23万人以上が避難を余儀なくされ、この年の6月には米東海岸にも煙が到達。ニューヨーク市などは、健康被害をもたらす可能性があるとして、外出を控えるよう市民に呼びかけた。

 研究グループは被害の大きかった5~9月に発生した山火事で放出されたCO2と一酸化炭素(CO)の量を衛星観測データで分析。CO2とCOに含まれる炭素の量を示す「炭素換算」で647テラグラム(1テラは1兆)と見積もった。これを国別の年間排出量に当てはめると、世界3位のインドに匹敵する量で、5位の日本をはるかに上回る。COは大気中で酸化してCO2になる。

 23年のカナダは1980年以降で最も気温が高く、乾燥していた。研究グループは、現在のペースで温暖化が進めば、カナダで23年にみられた極端な気候は50年代には常態化すると予測。山火事の激化でカナダの森林の炭素吸収機能は「危機」にさらされ、「温暖化目標を達成するために許容される排出量に影響を与えるだろう」と指摘した。【ニューヨーク八田浩輔】

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