台風10号の影響で荒波が打ち寄せる鹿児島市の海岸(29日午前8時30分)=共同

台風10号は29日午前8時ごろに鹿児島県薩摩川内市付近に上陸した。速度は当初の予想より遅く、28日は時速9キロ以下でジョギング並みにあたる「ゆっくり」とした速度や、自転車並みの時速10キロ程度で進む時間帯が目立った。低速のため同じ地域で長時間にわたり大雨が降り続ける恐れがある。

気象庁による24日時点の進路予想では、台風10号は時速30キロほどで小笠原近海を北進し、27日ごろに北東に進路を変えて28日に四国や近畿などに接近。29日には東〜北日本付近に到達している可能性があった。

しかし実際の進路は次第に西寄りにずれ、時速は10キロほどに低下した。気象庁によると、今後も時速10〜20キロほどのペースで列島を縦断すると予想されている。

台風は勢力の強弱にかかわらず自力で動くことはほとんどなく、主に偏西風や太平洋高気圧の縁を回る風などに影響されて進路を変更している。通常は西から東に吹く偏西風に乗って速度を上げて北東進する。

気象庁予報課の担当者によると、台風10号は日本の東の海上から列島に向けて張り出てきた太平洋高気圧に上空から押さえつけられた形となり動きが鈍った。また偏西風が通常よりも南に蛇行しなかった影響で、台風が気流に乗り損ねたという。

低速の台風は過去に大きな被害をもたらしている。2011年に四国・中国地方を縦断し「紀伊水害」を引き起こした台風12号は高知県東部に上陸後、ゆっくりとした速度で北上。広い範囲で1週間の総降水量が1000ミリを超えた。和歌山県や奈良県などで土砂崩れや河川氾濫が相次ぎ、全国で82人が死亡した。

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