鹿児島県薩摩川内市に29日朝、上陸した台風10号は、各地で強い雨や強風による被害をもたらし、ゆっくりと九州を移動している。各県では対応に追われ、引き続き警戒を続けている。
鹿児島で60代男性が海中に転落
鹿児島県などによると、鹿児島市の岸壁で船の係留作業をしていた60代男性が海中に転落して行方不明になった。鹿児島海上保安部が近くの海上で漂流遺体を発見し、身元を確認している。その他、転倒して骨折した同県奄美市の60代男性など3人が重傷、21人が軽傷を負った。建物の被害は龍郷町で24棟、指宿市で2棟が一部損壊。喜界町では停泊中の漁船2隻が沈没した。
ライフラインにも影響が出た。九州電力によると29日午後4時現在、鹿児島県内は約18万戸が停電しており、同社は復旧の見込みについて「確認中」としている。停電の影響で日置市や曽於市、南さつま市など6市町の一部地域では断水も発生した。
鹿児島地方気象台によると、同県錦江町では29日午前4時20分までの12時間雨量が353・5ミリに達し観測史上最大となった。また、枕崎市で最大瞬間風速51・5メートル、鹿児島市で最大瞬間風速38・8メートルを観測。鹿児島市平之町の平田公園では高さ数メートルの立木が根元から折れて倒れた。市公園緑化課の担当者は「あの折れ方では、もう切るしかない」と残念そうに話した。【取違剛】
宮崎で突風、けが人や家屋被害
宮崎県の午後2時現在のまとめでは、宮崎市や門川町で重傷1人、軽傷34人のけが人が出た。住宅被害も相次ぎ、1棟が半壊し、55棟が一部損壊したという。同県内各地に設けられた避難所には一時3393世帯5486人が避難した。
宮崎地方気象台によると、同県美郷町神門(みかど)では29日未明に1時間雨量で95・5ミリを記録し、同日午後1時半までの48時間雨量が794・5ミリで8月の観測史上最大となった。また、宮崎市田野では同日午前1時過ぎ、最大瞬間風速32・3メートルを観測した。
28日に宮崎市佐土原町や大淀川南側エリアで続発した突風により、けが人や家屋被害が相次いだ。県によると、宮崎市のけが人や住家被害の多くが突風関連という。
突風から一夜明けた29日朝、大淀川とJR南宮崎駅の間にある同市東大淀などでは、屋根や壁が飛ばされたり、ガラスが砕け散った被災建物や周辺の後片付けに追われていた。ある高齢男性は「こんなことは初めてだ」とやりきれないというようにつぶやいた。【下薗和仁】
熊本、80代女性が避難中に転倒
熊本県では、避難移動中に転んで腰を打った氷川町の80代女性など、計4人についていずれも転倒によるけがの被害が確認された。29日午後2時現在で、約1万3900戸で停電が発生している。
熊本地方気象台によると、降り始めからの総雨量が県東部山沿いで500ミリを超えている所があるほか、30日正午までに、熊本▽阿蘇▽球磨――の3地域で24時間雨量が最大400ミリと予想。同日午後にかけては線上降水帯が発生する恐れがあるとして、警戒を促している。
熊本市では市電や路線バスなどの公共交通機関は軒並み運休。普段は大勢の人や多くのバスでにぎわう熊本市中央区の桜町バスターミナルは1台もバスはなく閑散としていた。
水俣市では強風で倒れた倒木が県道を塞いだ。市内のスーパーなどは軒並み臨時休業。この日が9月定例会の初日にあたった水俣市議会では、当初の午前10時開会予定を1時間余り繰り上げた。
高森町では土砂崩れがあり民家に流入。けが人はなかった。【山口桂子、西貴晴】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。