能登半島地震からの復興に向け前を向く人々に話を聞く「能登人を訪ねて」今回は観光地としても人気のある輪島市の朝市通りを訪ねる。能登半島地震による大規模火災で多くが焼失した朝市通り周辺。解体作業が進み、一時よりがれきの量は減ってきたように見える。そんな焼け跡のすぐ隣に建つ酒造店で、今回は復興にかける思いを聞いた。

焼け跡のすぐ隣で火災を逃れた酒造店

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朝市通りに建つ唯一の酒蔵、日吉酒造店。1912年に創業し、110年以上、地元住民に愛される酒を造ってきた。

日吉酒造店の店主、日吉智さん。実は、稲垣真一アナウンサーは、日吉夫妻の結婚式の司会を務めた縁から公私にわたりお世話になっているという。

地震から7カ月後にようやく電気が復旧

そんな日吉酒造店、7月31日にようやく店の電気が回復したそうだ。妻の童子さんは、その時の様子を「うれしかった」と振り返る。

日吉童子さん:
こんなにうれしいものかと、明かりって大切なんだと思いました。

智さんは、電気が回復するまでのおよそ7カ月について、あっという間だったと振り返る。童子さんは、「遅すぎるかなって。もうちょっと早ければ子どもも輪島で小学校行けたりしたのかなと」

実は日吉夫妻、今も金沢と輪島と行ったり来たりの生活を続けている。子どもは金沢の学校へ通っているため、二拠点生活だ。費用もかかることに加え、輪島の風景と金沢の風景が、同じ石川県にもかかわらず別世界であることにしんどさを感じそうだ。

2024年1月1日。地震が起きた時の様子を2人ははっきり覚えていると言う。地震発生した時、日吉さん家族で初詣に行った帰りに、近くのみなと橋で1度目の地震にあった。智さんは、蔵が心配になり急いで店に戻り、車を止めて店に入ろうとした直前で2度目の地震。それが震度7だった。

その時の様子を童子さんは、「すごかったです。立ってられないんですよ。這いつくばってもジャンプする感じで。」と振り返る。智さんも地面が回っている感じだったそうだ。地震で店の奥は大きく崩れた。その時の様子を智さんは、「ドラマに出てくるスローモーションのような感覚だった」と回想する。童子さんによると、その時、智さんは「終わったな」とつぶやいていたそうだ。

酒蔵が倒壊し大切な日本酒が入ったタンクもダメに…

地震で酒蔵が倒壊、日本酒が入ったタンクにはヒビが入り、使い物にならなくなった。さらに日吉夫妻を悩ませるのが、仕込みに使っている井戸だ。井戸の壁の石が一部崩れ、埋まってしまったのだ。

智さん:
地震後に最初見たときは数センチから数十センチ液面があった状態で、半年たっても表面は水分持っているので、井戸が死んでいるわけではないのかなと…
稲垣アナ:
まさにここのお酒の特徴づけているのがこのお水だと
智さん:
そうかなと思っています。

店舗兼自宅は半壊、基礎にヒビが入って住むことができなくなった。そして朝市通り周辺は大規模火災が発生。しかし…、日吉酒造の前で火は止まった。

実はこのあたり、過去にも大きな火災があったそうだ。智さんによると昭和33年頃、今回とは逆側から火の手が上がり、これまた日吉酒造店の直前で火が止まった。智さんは「この地でこの仕事を続けろということなのかな」と感じたそうだ。この場所で、建物を残して、何とか再建しなければならないと

他の酒蔵の協力で今年の酒造りを再開

店で酒造りができなくなったため、日吉さんは小松市や白山市の酒蔵をはじめ、北海道や広島の酒造会社の協力も得て、今年の酒造りを行った。再建への第一歩だ。

ただ、今、一番懸念していることは、輪島市が指針を決める前に日吉酒造を再建した場合、この近辺のルールと違うと言われないか。このため、再建に乗り出せないという。

智さんは、元のにぎわいを取り戻したいが、自分だけではできない。燃えた地域として一体となって復興に進んでいきたい。そんな思いがあるのだ。

思い描く復興の絵は住民みんなで

日吉酒造店の向かいで行われている本町九区復興会。ここでは、地元の人たちが集まり、将来の街づくりについて意見を交わしていた。日吉さんは本町九区の区長を務めている。

智さん:
最終的にはここに住んでいた皆さんが満足できるような形になればいいなと。それに対して自分で協力できる部分はしていこうと考えています。

大規模火災があった朝市通り周辺は、能登半島地震の象徴的な存在としてメディアはよく取り上げてきた。しかし全国的な注目を集めることが、そこに暮らす住民にとって負担にもなっている。智さんは「注目されるが故に、立派に復興させなければならない」そんな思いが、重荷にもなっているのだ。

他の酒蔵で酒造りをしたことで、自分自身、酒造りが好きなんだと言う事を再認識したと言う智さん。だからこそ、この地で再建したい。そんな思いがあふれていた。

(石川テレビ)

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