9月1日の防災の日を挟んで列島を縦断している台風10号は、誰もが被災者になりうる災害大国の現実を突きつけている。被害が少しでも抑えられることを願うとともに、日ごろの備えの大切さを改めて確認したい。
台風10号は気候変動による偏西風の蛇行もあって速度が遅く、8月下旬から日本列島を迷走している。この間、高い海水温が大量の水蒸気を供給し、中心から離れた地域でも記録的な大雨となった。引き続き警戒が必要だ。
政府は災害に備え、1日に予定していた防災訓練を中止した。各地で土砂災害などが起きており、迅速に支援してほしい。
交通機関に早い段階から計画運休が広がったのはよい傾向だ。混乱や試行錯誤はあるが、被害を広げかねない無理な移動を減らし、早めの判断や行動が定着していけば、減災につながる。
今年は8月に初めて南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発令された。幸い注意は1週間で済んだが、避難先や備蓄を確認する機会になったのではないか。
行政は空振りを恐れず、必要な注意を呼びかける。国民も情報の意味を理解し、日常生活を送るなかで災害に備える。双方がリスクコミュニケーションの練度を上げ、災害時に自助、共助、公助がうまく機能するようにしたい。
気がかりなのは、台風被害の目立つ地域が南海トラフ地震の警戒区域に重なることだ。巨大地震と風水害が相前後して起こる複合災害の対策は、具体的な議論がほとんどない。風水害が頻発する今、真剣に考えるべきだろう。
1日は能登半島地震の発生からちょうど8カ月にあたる。半島部が被災すると救助や復旧が難航し、高齢化やインフラの老朽化も相まって復興を遅らせる。息の長い支援が必要だ。事情の似た地域は各地にあり、対策を急ぎたい。
いざというときは準備してきたことしかできないのが過去の災害の教訓である。平時から入念な備えを心がけたい。
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