視聴者から寄せられた天気にまつわる素朴な疑問や、珍しい気象現象、知りたいことなどを村田気象予報士がわかりやすく解説する「天気のギモン」のコーナー。今回のテーマは「台風に異変が!」です。
 
台風10号は進路が定まらず、動きが遅く迷走。典型的な台風の進み方とは異なりました。今回の台風10号の速度が遅かった理由について見ていきます。
 
そもそも、台風は自分で動くことはできません。今回は、太平洋高気圧とチベット子気圧という2つの大きな高気圧に挟まれてしまったのが要因の一つです。高気圧は時計回りに風が吹いているので、その間に挟まれ、向きの違う2つの風に動きを遮られました。さらに、上陸後も偏西風が日本よりも北にあったので、台風が偏西風に乗ることもできず、身動きが取れなくなってしまいました。
 
近年、台風の移動速度が遅くなっているという分析があります。
 
気象庁気象研究所・主任研究官 山口宗彦さん:
「台風の移動速度について過去40年のデータを使って調べてみると、かなり遅くなっている。特に9月、10月の秋台風が顕著に移動速度が遅くなっていることが分かった。地球温暖化によって熱帯域と北極域の温度差が弱くなり、日本付近を移動する台風の動きが遅くなる、というメカニズム。偏西風は、台風がたっている構造を壊す要因になるので、それが弱くなるということは台風が勢力を維持しやすい環境になる。つまり偏西風が弱くなることによる台風の勢力の維持、という一面もある。温暖化がさらに進めば偏西風がさらに弱まり、その結果を受けてのシミュレーションを見ると、台風がさらに遅くなることが考えられる」
 
近年は、台風10号のように、日本付近で速度が上がらず大雨被害につながった台風がいくつか確認されています。2011年9月の台風12号は日本付近に停滞したのは5日間、2017年8月の台風5号は日本付近の停滞は6日間です。どちらも日本の上空の偏西風が弱く、動きが比較的ゆっくりでした。これからも、こうした事が予想されるということです。
  
注意しなければならないのは「進路予想は常に変わる」ということ。さらに「台風が離れていても大雨暴風による被害がでる」ということです。「大丈夫だろう」と思わず「来るかもしれない」と思って備えることが大切です。
 
現在、台風11号(熱帯低気圧)は小笠原諸島の東にあり、今のところあまり影響はなさそうですが、4日、新たに熱帯低気圧が発生しました。今後も台風の動きに注意が必要です。

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