兵庫県議会の百条委員会で証人尋問に臨む兵庫県の斎藤元彦知事(6日、神戸市中央区)

兵庫県の斎藤元彦知事がパワハラ疑惑などを内部告発された問題を巡り、兵庫県議会の調査特別委員会(百条委員会)は6日、斎藤氏を証人尋問した。前西播磨県民局長による告発を公益通報として扱わなかった対応などを追及する。

前県民局長は3月12日、告発文書を一部の報道機関などに配布した。斎藤氏は20日に文書を入手し、21日に内容が事実なのか調査するよう指示。25日に片山安孝前副知事(7月に辞職)が前県民局長に事情聴取した。前県民局長は4月4日に県の窓口に公益通報したが、県は公益通報の調査結果を待つことなく、5月7日に停職3カ月の懲戒処分とした。

懲戒処分については、これまでの証人尋問で職員が「公益通報の調査結果を待って決めるべきではないか、と進言した」と証言している。

斎藤氏は「調査に時間がかかりそうだという報告は受けたが、公益通報(の調査)を待ってからやるべきだという進言を受けた記憶はない」と証言した。人事課に調査結果が出る前に処分するよう検討を指示したとの指摘には「私がそういった指示をしたという記憶はない」と述べた。

文書を入手した経緯については「名前は答えられないが、一般の方から入手した」と説明。3月21日に「片山氏ら幹部職員4人を集め、『誰がつくったのか、なぜつくったのかを把握するのが大事。しっかり調査するように』と指示した」と語った。

片山氏も証人尋問で証言した。文書で名前が挙がっている自身が調査したことについて「知事から早く調べるようにと言われたので私が乗り出した」と述べた。

片山氏による事情聴取時の記録をもとに質疑された。「メールの中で名前が出てきたものは在職しているということを忘れんとってくれよな」「皆、嫌疑をかけてやる」などの発言や、嫌疑をかけた職員の人事異動取り消しを示唆する発言もあった。

片山氏は「(告発が)『斎藤政権』に対する一つの大きなダメージを与える計画であって、かなり不正な目的ではないかと思った」と述べた。委員から「人事権をちらつかせた脅しだ」と指摘され、「反省している」と語った。

5日の証人尋問では、人事課が3月24日の時点で第三者機関で文書を調査する案を策定し、総務部長に伝えていたことがわかった。設置案は立ち消えになった。

その経緯について、片山氏は当時の総務部長から報告を受けたと説明。人事当局が第三者機関の設置について斎藤氏に話したが「第三者機関は時間かかる」と否定されたと聞いたとした。

片山氏に先立ち、5日の証言の訂正を申し出た原田剛治産業労働部長が再び出頭した。前県民局長の私的情報を含む内部の調査資料を「人事課から聞いた」とした証言について、「3月26日に産業労働部の次長に対し話を聞く必要が生じ、片山氏から連絡を受けてその際に概要を聞いた」と訂正した。

午後には公益通報制度に詳しい山口利昭弁護士が参考人として意見を述べた。前県民局長の告発文書は公益通報に当たるとの判断を示し、兵庫県が通報者を保護するための措置をとっていないと指摘。「文書の存在を知った直後に、誰がどんな目的で書いたのか探索するというのはありえない。法令違反だ」と述べた。

百条委の調査は年内をめどに続くが、県議会では不信任決議案を巡る動きが活発になっている。立憲民主党系や無所属の県議9人で構成する第4会派のひょうご県民連合は19日開会の県議会9月定例会で提出する方針で、最大会派の自民(37人)や第2会派の維新(21人)にも連携を呼びかけている。

こうした動きに対し、自民は6日夜に協議し、維新は来週対応を決める方針だ。不信任決議案の可決には出席議員の4分の3以上の賛成が必要となり、全議員が出席した場合は65人の賛成が必要となる。可決されると、知事は10日以内に議会を解散しなければ失職する。

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