北海道・知床沖で2022年4月、観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」が沈没し乗客乗員26人が死亡、行方不明となった事故は23日、発生から2年となった。出港地の斜里町ウトロ地区で追悼式が開かれ、山内浩彰町長は「事故が二度と起こらないよう何をすべきか。地域全体で繰り返し問い直すことを誓う」と述べた。
この日の最高気温は3度ほど。7歳だった息子と元妻が行方不明となった帯広市の男性(51)は「暖房が必要なほど寒く、海も荒れている。2人の苦しさが分かるようで、やっぱりここに来るのはつらい」。式には参加せずウトロを後にした。
男性を含む乗客14人の家族計約30人は損害賠償を求め、5月下旬以降、カズワンを運航した知床遊覧船と桂田精一社長(60)を相手取り、札幌地裁に提訴する。
町によると、式には一般も含め約150人が参列し、うち乗客家族ら関係者は約40人。花で埋め尽くされた祭壇に向かって手を合わせたり、頭を下げたりして献花した。桂田氏名義の供花もあったが、桂田氏は姿を見せなかった。
山内町長は終了後、乗客家族から慰霊碑の設置を要望されたと明らかにし、「しっかり受け止めて考えたい」と話した。
知床小型観光船協議会の会長で「ゴジラ岩観光」の神尾昇勝統括部長は「私たちにとっては2年の区切りは関係ない。安全運航を続け、信頼を得るしかない」と話した。
地元住民から風化を危ぶむ声も。40代の漁師は「発生1年後までは海に浮いている物があれば事故に関係があるのではないかと考えたが、最近はそう考えることも少なくなった」と打ち明けた。
第1管区海上保安本部(小樽)は桂田氏らを業務上過失致死の疑いで捜査している。23日、行方不明者6人の手掛かりを求め知床半島の沿岸部を捜索したが、新たな手掛かりは見つからなかった。〔共同〕
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