シリーズ特集「広島県警密着24時」7弾目となるきょうは「爆音走行」です。
夜中に大きな音を立てて走る爆音バイク。
取り締まりに密着すると時代と共に変化する暴走の実態がわかってきました。

大きな音を立てて走り去るバイク…
爆音バイクと呼ばれこの走行が県内で問題となっています。
爆音走行の苦情に関する110番通報は今年に入って急増。
5月は去年の同じ時期と比べおよそ3倍に増えました。
静かな夜が脅かされるだけではなく、事故につながるケースも…。

広島市では、改造したバイクで赤信号を無視して走行した結果、交差点で乗用車と衝突。車を運転していた女性がけがをしました。

福山市でも暴走族に所属している16歳の少年が赤信号を無視するなどの暴走行為の最中に他の車にぶつかる事故が発生。
爆音走行はいまや社会問題化しています。

一方で、警察の検問はSNSであっという間に拡散され、従来の取り締まりが難しくなっているといいます。
県警はこの事態を受け取り締まりの体制を強化。
暴走行為だけでなく、爆音での走行にも対応する暴走・爆音走行対策室を先月、全国に先駆けて設置しました。
広島県警は交通部門以外との連携の強化を図る考えです。

【広島県警 暴走・爆音走行対策室長 小田則雄警視】
「警察署と連携を密にして、また警察本部の中の少年対策課とか、サイバー犯罪対策課とか、いろんな課がありますけれども、そこと連携を密にして、対応できることが一番の強みだと思います。「うるさいので何とかしてくれ」という声が多いので、できれば静かになったなと感じてもらえるように捜査をしていきたいなと思います」

辺りがすっかり暗くなった夜9時。
広島中央警察署で取り締まりなどを担当する交通第2課の警察官が覆面パトカーに乗り込みます。
普段は白バイに乗る佐々木忍警部補と猪田将太巡査部長。
検問による取り締まりが難しい中、いわゆる「流し」の取り締まりで目を光らせます。
広島市内を走ることおよそ1時間さっそく、爆音バイクの情報が入ってきます。

【無線】「バイク数台が空ぶかしをしながら走行していた」

広島市西区のマリーナホップ周辺…大きな音を立てて走行する4台のバイクを発見。
【佐々木警部補】「止めよう」
【猪田巡査部長】「バイク止まってください。全部止まってください。左によって止まってください」

【若者】「もしかしてうわさの対策課?対策室じゃないん」

いわゆる旧車と呼ばれる古いタイプのバイク。
若者の間でブームとなっていて、集団走行が増えた背景になっているといいます。

しかし、エンジン音や整備に問題はなく検挙することはできません。できることは静かに走るよう諭し説得することだけです。

【広島中央警察署交通第2課・猪田将大巡査部長】
「目に見える違反行為がなかったとしても多少なりとも自分の感覚としてうるさいよと思うのであれば、声掛けをして実際にそれを理解してくれればいいのかなと思って」

法律上の線引きだけでは平穏な生活は守れない。一人の人間として若者と接するしか前に進む方法はありません。

【佐々木警部補】
「初心2輪なんじゃないか。前のは」
【猪田巡査部長】
「その可能性もなくはないですね」
【佐々木警部補】
「ちょっとやろうや」
【猪田巡査部長】
「そちらで止まって待っておいてください。バイクの運転手さん」
【猪田巡査部長】
「ええ音で走りよったけえ、ちょっと止まってもらいました」
【少年】
「ええ音っしょ」
【猪田巡査部長】
「スピードは速い」
【少年】
「やりすぎ?」
【猪田巡査部長】
「早すぎよ。お前ら一発免停なるで」

意外にも思える素直な受け答え、これが現代の爆音走行の現実です。
【猪田巡査部長】
「初心っすね」
【佐々木警部補】
「さあ、免許取って何年?」
【少年】
「免許取って…5月」
【佐々木警部補】
「2人乗りできますか?できませんか?」
【少年】
「できないです」
【佐々木警部補】
「できません。もしなんか事故して後ろの子けがさせたときに責任取れますか?」
【少年】
「そうなりますよね」
【佐々木警部補】
「もうちょっと辛抱すりゃいいんじゃけ」
【少年】
「はい、辛抱します」
【佐々木警部補】
「ましてやあの速度で、事故したら死ぬで」
【佐々木警部補】
「年なんぼかいの」
【少年】
「17です」
【佐々木警部補】
「17か」
【少年】
「高校退学になりました」

取り締まりを強化するだけでは本当の意味で犯罪は減らない。

【佐々木警部補】
「あんたみたいないい子は事故に遭ってほしくないんよ」

免許取りたての少年に優しく語り掛けます。
一方で、市民の平穏を妨げる爆音には厳しい目を向けます。

【少年】「あれって騒音に入りますか」
【佐々木警部補】「測ればアウトかもわからんの」
【猪田巡査部長】「かけていいん、彼の」
【少年】「いいですよ」
【猪田巡査部長】「かけて」
【佐々木警部補】「うるさいのお。ショート管じゃけって言っても限度があるでしょう」

大きな音だと整備不良や消音機不備で検挙される可能性もあります。
しかし、最近の爆音バイクは組織性がなく、大きな交通違反もしないため、取り締まる難しさがあるといいます。
さらに、最近の若者はある特徴が…

【佐々木警部補】
「やってることはちょっと爆音立てて一般の方から暴走族にとらえられると思うんですけど、止まれと言えば素直に止まるし、普通に話もするごくごく普通の少年ですよね。旧車が好きなら好きでそこをやっぱり理解してやってどんだけ人に迷惑かけとるんかっていうのをですね、教えてやればある程度は向こうも理解してくれるんじゃないかと。地道なわずかわずかな積み重ねだと思うんですけど」

夜の平穏を脅かすバイクの集団走行。
広島の静かな夜を守る取り締まりはこれからも続いていきます

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